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澪「ふぇ?な、なんだよいきなり」 律「にしし、確かになー」 紬「凶器よねー♪」 キラキラ 澪「ちょっ!そ、そんな目でみるな!」 梓「凶器……」 ジーッ 澪「こっちも!?ゆ、唯!いきなり何言い出すんだよっ」 唯「えー、だって澪ちゃん敵の顔をおっぱいにうずめて窒息死とかさせそうじゃん」 澪「えっ」 澪「そっちの凶器か……いや、どういう凶器だよ!!」 律「あー」 澪「あーってなんだ!あーって!」 紬「あー」 澪「ムギまで!?」 唯「ね、なんかそういうヒロインとかなりそうだよね」 梓「まあ、そう言われてみればなんとなく……」 澪「なんとなくない!なんとなくないから!戻って来い梓!!」 唯「ね、だから澪ちゃんはそういうヒロインなんだよ」 梓「すごいです、澪先輩!」 キラキラ 澪「洗脳完了!?」 唯「もー、澪ちゃんも認めちゃいなよー♪」 澪「違うから!なんか事実として扱われてるけど違うから!」 紬「そうよ、唯ちゃん。澪ちゃんを追い詰めちゃだめ」 唯「ムギちゃん?」 澪「ムギ……」 ジーン 紬「ヒロインが正体を明かしたら変身できなくなっちゃうのよ」 ボソボソ 唯「なるほど!」 ポン 澪「納得するなー!」 澪「もう、なんなんだよこれ……」 ゲッソリ 律「なんだよ澪、ノリわるいなー」 澪「どんなノリを求められてるんだ、これ」 ガチャ 純「おじゃましまーす」 梓「あ、純」 唯「」 キュピーン 純「梓、これ机の中に残ってたよ。明日提出でしょ?」 梓「あ!ごめん、ありがと!」 唯「澪ちゃん澪ちゃん!」 澪「ん?」 純「?」 唯「ほら見て、怪人が出たよ!倒さないと!!」 純「えっ」 澪「おい唯、おまえな……」 唯「ほら見てよあれ!モッ………ふさふさ怪人だよ!倒さないと!」 律(モップって言った) 梓(モップって言おうとしてあんまりだと思って言い直した) 唯「さあいけ澪ちゃん!学園の平和をまもるんだ!!」 純「えーと……私はどうすればいいんでしょう、これ」 澪「ほら、純ちゃんも困ってるだろ。謝れ、唯」 唯「えっ」 純「……」 唯「…困っ……ちゃった?」 純「がおー」 唯「やっぱり怪人だー!」 キャーキャー 澪「ノリがいい!?」 ガビーン 梓「ごめんね、つき合わせて」 純「いやー、なんか楽しそうだし。がおー」 唯「キャーキャー!」 紬「キャーキャー!」 澪「なんだこれ」 律「なにやってるんだ!」 澪「うわっ。びっくりした」 律「善良な市民が怪獣に襲われるのを黙ってみてるなんて、それでもヒロインかっ!」 澪「いやヒロインじゃないから!」 律「あまったれるなー!」 ペチーン 澪「こそばい」 律「あなたがそんないくじなしだとは思わなかったわ!あなたなんてヒロインじゃない!」 澪「だからヒロインじゃ」 律「怖いならそこで見てればいいのよ!あんなやつわたしがやっつけてやるんだから!!」 澪「……どんなキャラ設定だよ」 律「いくわよ!うおおおおおおおおおっ!!」 トテテテテ 純「あ、ども」 律「……」 純「……」 律「……」 純「えい」 ペチ 律「ぎゃああああああああああああああっ!!!!!!!!!」 ドタバターン! 唯「ああっ、りっちゃんが!」 紬「りっちゃーーーーーーん!!!!!」 律「う、うう……、やっぱり生身で怪人に立ち向かうのは…むり…だった……ぜ」 ゲ゙ホッゲホ 唯「しゃべっちゃだめだよ、りっちゃん!」 紬「生身の体で怪人の攻撃を受けるなんて……りっちゃん…っ」 律「……へへ、だ、だれか……が、まもらなきゃいけないんだ、だれかが……みんな……を」 チラッチラッ 紬「りっちゃん!ああ、なんて優しい!そして悲しい人!」 チラッチラッ 唯「だいじょうぶ!きっとヒロインが!きっと、ヒロインが助けにきてくれるよ!!」 チラッチラッ 澪「…………」 梓「澪先輩……」 澪「やんないからな」 唯紬「「えーーーっ!」」 唯「ぶーぶー、みおちゃんノリわるーい」 紬「しゅーん」 律「だ、だいじょうぶ……だ……」 唯「りっちゃん?」 律「二人とも、あたしの手を……」 紬「え、ええ!」 ギュッ 律「いまからあたしの魂を……二人に預ける」 唯「ええっ?」 律「澪を……いや、ヒロインを!助けてやってくれ!」 紬「でも、でも!そんなことをしたら律ちゃんが!」 律「どっちにしろこの傷じゃあ助からないさ……それなら」 唯「でもでも、実際どうすればいいの?」 律「……始めてやるゲームには、チュートリアルが必要だろ?」 ニヤリ 純(ほったらかしだなあ……) 唯「うわー、りっちゃんの魂のちからで私とムギちゃんの体がひかりかがやくー!」 紬「ものすごい力がながれこんでくるわー」 純(あ、なんかはじまった) 澪「なにやってんだ……」 唯「ぽよぽよぽよー、わたしはおっぱいの精霊、ぽよぽよー」 澪「わっ、なんかこっちにくる」 唯「ぽよ!」 ガシッ 澪「えっ、なに!?」 紬「ぽよぽよー♪わたしもおっぱいの精霊ぽよー♪」 純「えっ、こっちも!?」 紬「ぽよ♪」 ガシッ 純「えっ?ていうかおっぱい?なんでおっぱい!?」 唯「ぽよ♪」 ズイッ 澪「わ、おすな!」 紬「ぽよー♪」 ズズズィッ 純「え、なに?なにが始まるの!?」 唯「ぽよー♪」 紬「ぽよよー♪」 澪「わわわっ!近い近い近いっ!」 純「ちょ、ぶつかっちゃいますよっ!」 紬「ぽよ♪」 ヒザ 純「えっ」 カックン 唯「ぽよー!」 グイッ 澪「わっ!」 ポニュン 澪「ひっ、ひゃわわぁ」 純「もがが!?も?」 律「きまったあああああああ!!ヒロインの必殺技、おっぱい殺しだー!!!」 梓「死んだんじゃなかったんですか律先輩」 律「わたしは田井中律の霊魂よ!すぴりちゅある!」 梓「スピリチュアルをこんにちわ的な意味で使わないでください」 律「これからはピンチの時に現れてヒロインを支えるの!おっぱいと共にあらんことを!!」 梓「そこはせめて英語にしてください」 律「バストと共にあらんことを」 梓「Good」 純(わ、私の顔に澪先輩のおっぱいが?なんで?なんで!?) 澪「や、やめろ唯、こらっ」 唯「ぽよー♪」 グリングリン 紬「ぽよよー♪」 グリリン 澪「やあっ //// か、回転くわえるなぁ……」 純「ふおおぁぁぁ」 モゴモゴ 澪「や、喋っちゃ……熱い息が…… //// 」 純(もうなんでもいいや、楽しもう!!) 純「ふもふも!」 澪「やんやん」 梓「……でも冷静に考えて」 律「うん?」 梓「しないですよね、窒息」 律「したらしたで大変だぞ」 梓「ですよね」 律「えー、コホン。ヒロインはそのおっぱいに敵の顔を埋めることで窒息する必殺技をもっていたがー!」 唯「ぽよ?」紬「よ?」 律「おっぱいの精霊の力により5分間おっぱいに埋めることで敵を倒せるようになったのだ!!」 唯「ぽよー」紬「了解ぽよー」 純(冗談じゃあないッッッッッ!!!!!!!) 純「ふも!ふもももも!!」 グリングリン 澪「やっ!ちょ、どうしたん…あっ!」 ビクンビクン 律「うおお!怪人が苦しみのた打ち回っているぞー!」 梓「あと1分でーす」 純(なんだって!?早い!早すぎるよッッ!!!) 純「もももー!」 ギリュンリュンリュン 澪「やーっ!!」 純「もっもっもっ」 グリグリグリ 澪「あっ、んっ!」 ビクン 梓「十秒ー。9、8、7……」 純「もーっ!!!」 ググググッ 澪「や、ちょ!つぶれる!つぶれるっ」 梓「3、2、1」 唯『エクスプロージョン!』 パッ 紬「えっ?あ、ろ、ろーじょん!」 パッ 澪「…解放された」 純「もっもっもっ」 梓「おわりだよー」 純「やーん、もっとー」 律「ぐだぐだだなぁ」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 純「ということで!澪先輩のおっぱいで改心して良い子になりました」 唯「よかったね、純ちゃん!!」 梓「いや、時間切れになってもむしゃぶりついたままだったじゃん」 純「そ、それはー……」 紬「まあまあ、梓ちゃん。昔からいうじゃない?」 紬「“おっぱいが好きな人に悪い人はいない”……ってね!」 梓「いや、なんか綺麗にまとまりそうな雰囲気で言われても」 唯「そうそう、街を破壊する怪人が澪ちゃんのおっぱいのおかげで善良なおっぱい好きに生まれ変わったんだから」 梓「善良っていうんですか、それ」 紬「澪ちゃんのおっぱいには暴力性をおっぱい好きに還元する力があるのよ♪」 梓「なるほどそれはスゴイデスネー」 澪「モウ オヨメニ イケナイ」 唯「ほら澪ちゃん、そんなとこでまるまってないで!」 紬「そうよ!澪ちゃんのおっぱいに秘められた力があかされたんだから!」 澪「もうほっといてくれぇーっ」 唯「もう!そんなこといったらテキと戦えないよっ」 澪「だれと戦わせる気だ、だれとっ!」 唯「………」 唯「だれだろ?」 キョトン 澪「ハァ……」 2
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私のやんごとなき王子様 6日目 外は快晴、気分も上々。そんな今日も皆忙しく仕事をしているんだろう……いや、別に私が暇なのかというと全然違って、忙しい。 何故なら昨日に引き続き今日も医務室で仕事をしているからなのだ。 だけど、 ーーーどうして今日も鬼頭先生いないのよっ!? 朝食後にミーティングをして、その後医務室の手伝いをするように真壁先生から仰せつかったまでは良かった。問題はその後。鬼頭先生ったら昼前に 「ちょっとトイレに行って来る」 と言い残したきり帰って来ない! 私は午後から交代でやって来る生徒を心待ちにしながら、医務室から見える海に向かって愚痴をこぼした。 「どうして鬼頭先生に関わるとろくな事がないんだろ。いっつも私の事馬鹿にして遊んで、仕事まで押し付けて一人でどっか行くなんてちょっと酷いと思う!」 残念ながら探しに行く暇がないので一人でやるしかない。 文句を言った所で鬼頭先生の性格が劇的に良くなるとは思えないし、生徒指導を選んだのだからどんな仕事でもしっかりやらなきゃとは思ってるーー思ってるけど、やっぱり何だかすごく損してる気がする。 真壁先生も真壁先生だわ。どうして他にも生徒がいるのに鬼頭先生の手伝いに私を指名するかなあ。 「先輩荒れてますね」 「わっ、ごめん!」 完全に現実逃避していた私は、指を切った後輩の傷の手当をしていたことをすっかり忘れていた。 苦笑する後輩の指に絆創膏を貼り、申し訳ないと頭を下げる。 「今の愚痴は聞かなかった事にして?」 「別に言いませんけど、鬼頭先生って先輩の事からかったりするんですか?」 質問されて私は顔を上げ、つかみかかる勢いでその男の子に答えた。 「そうなの。んもう顔見る度に憎まれ口なんだよ!」 「ははっ、それって先輩の事が好きだからですよ」 後輩の言葉に私は自分を見失いそうになった。 「ーーはい? え? なんですって?」 思わず聞き返す。 「男って生き物は不器用ですからね。特に鬼頭先生みたいなスマートでクールな感じの男って、素直に思ってる事を口にしたりするのが苦手だと思いますよ」 俺も小学生の頃は好きな子にちょっかいだしてましたし。と言って後輩は笑った。 「それじゃあ鬼頭先生は小学生レベルって事?」 「ははは! 本当だ。あ、俺がそんな事言ったなんて言わないでくださいよ。それじゃあ、手当ありがとうございました」 そう言って医務室を出て行った。 私は考えた。確かに素直じゃないっていうのは私もそう思うし、納得だ。だけど、先生が私の事を好き……っていうのはちょっとねーー 「ーーいやいや、いくらなんでもそりゃありえないでしょ」 鬼頭6日目・No.2へ 一つ戻る鬼頭5日目・No.3 ブラウザを閉じてお戻りくださいv 私のやんごとなき王子様トップへ戻る
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唯「や、やっぱり不安だから…泊まっていかない?」 和「え…」 律(よくやった唯!) 和「でも…」 唯「お願い!」 和「…わかったわ。憂、泊まっていって良いかしら」 憂「はい!」 律「じゃああたしたちは帰るわ。じゃなー」 梓「お邪魔しました」 唯「うん、じゃあね~」 憂「き、気をつけてね…」 梓「うん。じゃあね、憂」 憂「じゃあ、晩ご飯作ってくるねお姉ちゃ……」 唯「?どうしたの、憂」 憂「なんか…お姉ちゃんって感じじゃないなぁ、って」 和「そうね…見た目は男の子な訳だし…」 唯「うう…」 和「でも、唯は唯だから。ね?」 唯「!…うんっ」 和「よろしい。じゃあお風呂でも入ってきたら?」 唯「え、でも和ちゃんはお客様で…」 和「いいの。ご飯作るの手伝いたいから」 憂「そんな、悪いですよ」 和「ジッとしてるのは性に合わないのよ。ダメ?」 憂「…じゃあ、お願いします」 憂「………」トントン 和「私は何をすればいい?」 憂「あ、じゃあ…お鍋見ていてくれますか?」 和「わかったわ」 憂「……」トントン 和「…何、悩んでるの?」 憂「えっ…」 和「浮かない顔してるわよ」 憂「そんなこと…」 和「嘘。いつからの付き合いだと思ってるの」 憂「…」 憂「…和さんには叶いませんね。 だから晩ご飯の手伝いなんて言ったんですか」 和「ふふ…。悩みがあるなら、相談にのるわ」 憂「………」 憂「……恋って…なんでしょう」 ……………… ………… …… 律・梓 帰り道 律「なぁ、梓ー」 梓「なんですか?」 律「憂ちゃんと何かあったのか?」 梓「え……」 律「なんか憂ちゃん、珍しくボーっとしてたからさ」 律「今日一緒にでかけたんだろ?」 梓「…珍しく鋭いですね、律先輩」 律「珍しくは余計だろ!」 梓「実は最近、私憂と付き合い始めたんです」 …………… ……… … 唯の家・キッチン 憂「なのに…なんだか梓ちゃん、私のこと恋人として見てない気がするんです」 和「………」 憂「私なんて…緊張しちゃって…」 憂「梓ちゃん、私と無理して付き合ってないかなぁって……」 和「……それは違うわ」 憂「…だって…さっきも梓ちゃん、お姉ちゃんとキスするとき『見ないで』って…」 和「憂。今日梓ちゃんと出かけていたんでしょう?」 和「好きじゃない人と出かけることなんてないわよ」 憂「……」 和「唯とのキスを見られたくなかったのは、 梓ちゃんが憂ちゃん以外にキスしてるところを見られたくなかったんじゃない?」 憂「……」 和「それにね……」 …………… ……… … 律・梓 帰り道 梓「憂が唯先輩にキスしてるとき、私叫びそうになりましたよ」 梓「男の人にキスする憂なんて…姉妹ってのはわかってるんですけど」 梓「憂見てると自分が何をしだすかわからなくて…」 梓「自分を抑えるのにいっぱいいっぱいで…」 律「だからか……」 梓「?」 律「お前な、それも大事だけど、憂ちゃんをもっとちゃんて見ないと駄目だぞ」 梓「え…」 律「自分のことでいっぱいいっぱいなんて、何贅沢なこと言ってんだよ!」 律「それで憂ちゃんへの対応、冷たくしてどうするんだ!」 梓「……」 律「あたしは恋とかよくわかってないけど…」 律「寂しそうな人を見るのは嫌なんだよ」 梓「……わかりました」 律「憂ちゃんを大事にしろよ」 梓「…はい!」 …………… ……… …… 憂「…梓ちゃん…」 和「どう?憂のこと、かなり意識してるのよ。梓ちゃんは」 憂「……」 和「憂は梓ちゃんのこと、好き?」 憂「……はい」 和「…よかった。」 和「その気持ち、大事にするのよ?」 憂「……はい!」 唯「お風呂、でたよ~」ホカホカ 和「あら。ちょうどご飯もできたのよ」 唯「わーいッ!」 憂「和さん…ありがとうございました!」 和「お安いご用よ」ニコ 唯「………」 唯「ふぇ~…お腹いっぱい! いつもの憂の美味しさに和ちゃんの美味しさがプラスされて最高だったよ!」 和「お粗末様でした」 憂「和さん、お風呂入ってきたらどうですか? その間に片付けしちゃいますんで」 和「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」 唯「ギー太ーっ♪」 和「ふぅ…お風呂ありがとう、良いお湯でした」ホカホカ 和「置いてあったパジャマ借りちゃったけどよかった?」 憂「はいー。私も入ってこようかな」パタパタ 唯の部屋 ~♪ 和「唯ー?」コンコン 唯「和ちゃん?入っていいよー」 ガチャ 唯「………!」 唯(お風呂上がりの和ちゃん…色っぽい…)ドキドキ 和「ギターしてたの、邪魔しちゃったかしら」 唯「…」ボー 和「唯?」 唯「わっ!」 唯(ま、前かがみに顔をのぞき込まないで~っ) 和「また顔赤いわよ」 唯(服の中…和ちゃんの…) 和「唯?」 唯(和ちゃんの…匂い…が…) 和「ゆ……ッ!?」 唯(もう…無理…) 和「……唯?」 唯(和ちゃんをベッドに押し倒してしまった…) 和「唯、どうしたの?」 唯(和ちゃんは私を心配した目で見てる) 唯(友達として……) ──チュ 和「…っん!?」 唯(唇柔らかい…) 和「ん、んぅ…ッ」モゾモゾ 唯「和ちゃん…」 和「は、はぁ…ゆ…い…なんで…」 唯「私今男の子なんだよ…」 唯「抵抗なんてできると思う?」ゴソ 和「…や…ッ」 和「唯ッ!何をして…正気に…」 唯「私は正気だよ。和ちゃんが好きだからこんなことしてるの」 和「…え…ッ」 唯「大好きだよ、和ちゃん…」チュ 和「ふ……ッ」 唯「…ちゅ、ちゅぅ…」スルッ 和「んんっ」ビクッ 唯「和ちゃん…おっぱい結構大きいんだね」 和「ゃ、あ、ゆい…駄目…」 唯「なんで?」 和「や、いや…」ウル 和「いやァーッ!!」 バンッ 憂「和さん!?」 唯「……う…い…」 憂「お姉ちゃ…何して…」 唯「あ…れ…私…なんで…」 和「ぅ…ひっ…く…」 唯「和ちゃ…泣いて…」 和「離して…触らないで…!」 パァンッ! 唯「…あ…」 和「……」スッ 憂「あ、和さん待って…!」 唯「……」 唯「わた…し…何てこと…」 和『…触らないで…!』パァンッ! 唯(嫌われた…) 唯(和ちゃんに…嫌われてしまった…) 唯「う…く、ぅ…ッ」 唯(叩かれた頬よりも…) 唯(心臓が…心がこんなに痛いなんて…苦しいなんて…) リビング 憂「和さん……」 和「……」 和「私……あんな…こと、され…っ」ブルッ 憂「和さん…」ギュ 和「唯が…怖かったなんて…」 憂「和さん…今日は寝ましょう。大丈夫ですから…」 和「……」コク 次の日 唯「おはよ…憂…」 憂「…ん…」 唯「…和ちゃんは…?」 憂「…お姉ちゃんが起きる前に帰ったよ」 唯「…そう…」 憂「…あの、お姉ちゃ…」 ピンポーン 憂「…はーい」 律「おっはよー憂ちゃん!」 澪「もう昼だぞ律…」 紬「まぁまぁ…」 憂「律さん…澪さん、紬さんも…」 律「へへっ、唯の姫様候補はこの二人も入るからな」 憂「とりあえず、あがってください」 澪「なぁ、律。そろそろ教えてくれよ」 紬「いきなり呼び出されてビックリしたわ」 律「百聞は一見にしかずだよ」 澪「だから何を…」 唯「あ…みんな…」 澪「…………」 紬「…………」 律「よお!ゆ…」 澪紬「誰ッ!?」 説明 澪「唯?」 唯「うん」 紬「唯ちゃん?」 唯「…うん」 律「んで!今はお姫様を探してるわけだ!…が」 律(唯!昨日は和姫とどうだった?)ボソボソ 唯(ん…と…)シュン 律「……」 律(こりゃあ裏目ったか…?) 憂(……) 澪「姫…?」 律「おとぎ話では、呪いを解くのは運命の人だろ?」 紬「白雪姫とか?」 律「ああ。だから唯の呪いが解けるんじゃないかってなー」 憂「昨日、私と梓ちゃん、律さん、と…和さんが試したんですが…」 澪「それで今日私たちが試すんだな」 律「そゆことーっ」 紬「で、でも…キスって…」 律「大丈夫大丈夫、ほっぺだよ」 紬「そ、そう?」 律「さ、行け!澪!」 澪「あ、ああ…こんな方法でいいのかわからないけど…」 澪「ゆ、唯?いいか?」 唯「…うん」 チュ 澪「………」カァ 律「戻らねーな…」 唯「うん…」 律「澪、何照れてんだよ。相手は唯だぞ」 澪「で、でも今は……」 律「…」ムッ 律「つッぎ!ムギな」 紬「え、ええ……」 紬「唯ちゃん、いいの?」 唯「うん」 紬「じゃあ…失礼しまーす…」 ──チュ 唯「…!?」 唯「あれ…?」 3
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327 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 02 16 52.12 ID QnDG1faX0 なんか凄いものを見てしまったので報告させてくれ。 ちょっと前にウチの鳥取に入ってきた新人が居る。 持ってるルルブはクトゥルフとSW2.0だけらしく、他のシステムは全然知らないらしい。 それでも初心者が二種類もルルブ持ってれば充分だって事でそいつが入ってから暫くはその二つをずっとやってた。 だけど、俺達も他のシステムやりたいから徐々にその二つからは離れて行った。 新人にも色々勧めてみたりして、最初はサマリーとかも渡して卓に参加させてたんだ。 でも、普通に募集してる時には入ってこないからあんまり興味を惹かれないんだろうと思って放置してた。 そんな感じでやってて、ここ暫くはオンセに顔を出してこないしTRPG自体に飽きてきたのかな、みたいに皆思ってたわけだ。 それがこの間久しぶりにオフで集まった時に新人がいきなりキレたわけよ。 曰く『皆は僕を虐めて楽しいんですか?』 全く意味が分からなかったし、もしかしたら見てない所で陰湿な事があったのかと思ってビビりながら話を聞いたみたが何の事はない、 『こんなに誘われないなんてイジメに決まってる』とのこと。 しかし、誘われないとは言ってもオンセの募集メールは回してるし、GMやりたい時はいつでも言ってくれと言ってある。 だが、新人が言うには『GMとか出来るわけないし、誘われるシステムもルルブ持ってないのばっかり。僕をハブろうとしている』という事らしい。 一応言っておくが、多少の偏りはあるとはいえうちの鳥取は単発メインだからシステムは色々使ってる。 最近やったので言えばメタガ、BB、神我狩とか。新しい物好きが多いから艦コレTRPGもやった事あるし。 しかし、そう言っても『僕は持ってない』としか言わないし、そんなにクトゥルフやSW2.0がやりたいならとりあえず自分でGMしたら?と言っても 『GMはできない』の一点張り。挙句の果てに『システムは皆で共有するべき。出来ない人が居るのは不公平』とか言い出した。 幾らなんでも暴論なので、俺の旧約魔獣の絆を例えに出し、 『こういうもう手に入らないのとかはある程度共有が必要かもしれんが、今よくやってるシステムは普通に手に入るだろ?』と言うとまさかの 『じゃあ僕にわざわざルルブ買えっていうんですか!?』とブチギレ。 みんなが絶句してる中でなんとか『まぁ、そうだよ』と言うと『信じられません』と言って新人は帰っていった。 一応、その後に『GMやりたくなるか、何かシステム手に入れたら連絡して』とはメールしたが、それ以降恨み事しか返信が来ない。 328 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 02 28 37.57 ID lMec/zdC0 乙 たいしたフリーライダーですなあ 329 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 02 40 59.29 ID U7cxnB+D0 [2/3] その新人もあれだけどお前ら釣った魚に餌やらない糞鳥取だなとは思う 331 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 02 55 59.41 ID sWEzNS+Z0 ていうか持ってたっていうSWとクトゥルフのルルブは買ったんじゃないのか? なんでそれ以外を買うことにそんな拒否感があるんだろう? 332 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 03 39 37.05 ID //e1VbkL0 ぶっちゃけ複数のルルブ買うのは結構抵抗あるだろ 333 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 03 46 01.90 ID bLZbsgxF0 [1/4] 複数システム遊ぶのが当然みたいな人種(自分もそうだし、このスレには割と多そうだ)と、 自分のナワバリと決めたシステムに固執して広げたがらない人種には、埋めがたい意識の差があると思う 334 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 03 47 48.66 ID 9F8/BNZl0 [1/4] いやまったく抵抗ない でもそういう人間って存在するのか よければ、なんで抵抗あるのか詳しく 335 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 03 50 00.32 ID EsI8uX3N0 そらお金かかるからだよ そもそも興味ないシステムとかむしろなんで買わなきゃならんの 336 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 03 55 35.43 ID oTnUqZzZ0 [2/6] 興味ないシステムはやらない。特定のシステムやる時だけ誘ってならともかく 327の報告は 『システムは皆で共有するべき。出来ない人が居るのは不公平』 これは論外。一度ぐらいはどんな物か見せるためにルルブか貸すことはあっても 自弁が前提だろ 338 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 04 58 37.64 ID L/F3WHTn0 [1/4] クトゥルフとSW2.0とガンドッグゼロしか持ってない自分には若干耳の痛い報告だなぁ まあ、困の騒ぎ方と、「共有すべき!」とか言いながらルルブ買わない態度はアウトだが 340 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 05 54 09.38 ID 4QNH74Z00 [1/6] そんなに嫌ならあまりオススメはしないがAmazonで古本でも買えばいいのに。それすら出来ない程貧乏なのか。 つか単発ならルルブ無しでも必ずしも遊べないわけじゃないし。勿論GMの協力と経験者の参加が望ましいが。 うちの鳥取はそうやってゲスト参加するうちにゲームへの関心が湧いてってルルブやサプリ買うってのが殆どだよ。 341 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 05 56 00.56 ID oTnUqZzZ0 [3/6] ルルブなしで遊ぶのオンセではさすがに無理だと思うぞ 342 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 06 06 26.41 ID 4QNH74Z00 [2/6] ああ、オンセ主体の鳥取か。そらキツいわな。 343 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 06 43 38.63 ID agQgUZ8i0 [1/2] オンセ主体だったのが厳しかったな…… しかし初めてやるシステムのルルブを買えってのも酷な話だろう 特に単発セッションばかりで頻繁にシステム変わるなら尚更 キャンペーンですらない単発セッションの為に今後使うかも面白いかどうかもわからないルルブを数千円出して買うのはなかなか抵抗あると思うぞ 344 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 06 45 19.73 ID tIvfzZJki [1/2] 327 報告乙 まあ、新人の言うシステム共有は確かに暴論なんだが、やった事も無い興味も無いシステムのルールブックを買わないと参加出来ないという状況はちょっともにょるなぁ 最初から色々なシステムを単発やショートキャンペーンで回すサークルだと伝えてれば避けられた事故じゃないかね 345 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 06 49 57.59 ID 4QNH74Z00 [3/6] 343 つっても単行本サイズの安いルルブとかもあるし。 今話題ならインセインとか 346 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 06 54 03.32 ID agQgUZ8i0 [2/2] 345 でも単行本サイズのルルブがあるとして、それをやるってメール来なかったら買えんやん? それに単発やった後もう使わないなら単行本でも買いたくなくね? ルルブ買わせる前にまずはシステムに触らせるべきだろう 347 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 02 04.05 ID R4pOmEPI0 [1/2] 327 報告からみるに ・所有していないシステムの時はサマリを渡している ・「システムを買え」発言があったとの記載がないので言ってない ・「GMをやれ」発言があったとの記載がないので言ってない なのに新人君の発言はぽかーんだな メンバーの誰かが下二点を嫌味っぽく言ってるのなら理解出来るんだが 348 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 09 32.44 ID L/F3WHTn0 [2/4] 347 一方の主張しか聞いてないから、嫌味っぽいとかのニュアンスについては判断不能だと思う まあ、大抵の報告者困は自分からボロだしてくるから この報告者がマトモっぽくて信憑性もあるのは確かだけど 349 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 17 11.08 ID VtwDnPPx0 [1/2] 持ってるシステムの卓を立てて欲しいとお願いすらしてなさそうだしな 誘われるのを待つだけのシステム限定PL専なんざどうしようもねえ 350 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 20 16.30 ID oTnUqZzZ0 [4/6] まあ、無理やり擁護すれば入った時に自分持ってるシステムが続いたから所属決めたのに その後、そのシステムがパタリとたたなくなったらあれなんか俺に含むことあるのかと 思うことはしゃあないくらいか。そのあとの主張が斜め方向すぎるけど 352 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 34 14.65 ID ZBvjchC50 [1/3] 立つシステム全部買ったら何万円かかるんだよ。 稼働率考えたら社会人の俺でもよう買わんわ。 353 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 36 03.86 ID fSuN14X/0 釣った魚にエサをやらない、はまぁその通りだな。 初心者だつってちやほやされてて、ある日突然 「俺らこれやるから。やりたかったらルルブ買ってきて。SW2.0? やりたければGMやれば?」 と言われたらまぁ・・・勘違いする奴は出るだろうなぁ… 確かに初心者の反応はアレだけど、 「こういう鳥取」だっつう周知は足りなかったんじゃないかなぁ、とは思う 354 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 48 18.85 ID W5iVw+Ux0 [1/2] 一番最初に「うちはいろんなシステムで遊ぶからね」と伝えていたならまあ しかし実際問題、PL一人ひとりがルルブ持ってなくても遊べると思うんだがなんで参加しないんだろう もちろんルルブ持ってない奴が「買わせるんですか!?」ってキレるのはおかしいが 355 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 48 35.11 ID 41CMojEb0 [2/3] 問題は新人くんが自分のやりたい卓が立たないからいじめだ!とか言いだしちゃうところじゃねえかなあ GMやりたくないとか経済的な理由でるるぶ買えないとかはあるだろうけど 別に言って聞いてくれない鳥取というわけでもなさそうだしやりたいことがあるなら頼めよとは思う いつまでも新人じゃなし鳥取が合わせてくれて当たり前と思ってるフシがあるのがなんとも 356 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 50 34.43 ID ILellE6VO [1/11] 単純に鳥取側に初心者、部外者をメンバーとして受け入れる下地が無くて、 初心者は初心者で合わないと思ったら無言で去ればイイだけなのを勘違いして居座ってるという それだけな感じがするな。 前スレの内輪ネタで楽しんでるから誘われたけど入らずに帰ったの 逆立場バージョンに近いっしょこれ 357 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 53 01.42 ID fxrh8J5b0 お客様なんだよな、結局 Twitterやらで「誰か誘って下さい」と言ってるだけのと同じで 358 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 07 55 43.40 ID VtwDnPPx0 [2/2] 持ってるシステム専門のオンセサークルに移れば万事解決するしな お願いや相談したりもせずプレイ環境も整えないなら 静かに去るのが一番だったろうにその発想もなかったなら とても残念な人物だったということだな 359 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 03 29.45 ID 7cZHdBEc0 [1/2] 何でやりたいシステムはあるのにGMしたがらないんだろう それとも「GMはできない」ってのは、宗教上の戒律で止められてるからなんだろうか 360 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 08 59.86 ID lp+Z4J03i 新人くんがお客様な困ったちゃんなのは確かなんだけど、それはそれとして報告者の鳥取も相当敷居が高い気がする 361 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 18 31.80 ID tIvfzZJki [2/2] 359 持ってるシステムから察するに動画から入った人だろうから、GMはPLの無茶な要求を上手く捌けるシステム玄人じゃないと出来ないって思ってるのかも 362 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 29 45.91 ID 1pMXTyvZ0 360 敷居高いのかこれ? 固定されたシステムだけじゃなくて複数システムやるのは普通じゃないのか? 363 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 36 52.14 ID RIr3Weh30 まあ、複数システムは別に普通だよな D&Dのサプリ全部揃えろって言ってるわけでなし 364 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 39 31.35 ID kY0hqdAN0 >新人にも色々勧めてみたりして、最初はサマリーとかも渡して卓に参加させてた って書いてあるんだから、新人放置して別システムばかりやってたってわけでもないしな 365 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 52 48.90 ID y6qT58uG0 [2/4] >『こんなに誘われないなんてイジメに決まってる』 と言ってるけど実は >『GMとか出来るわけないし、誘われるシステムもルルブ持ってないのばっかり。僕をハブろうとしている』 なので別に「誘ってない」わけではない、単に「誘われたけど新人くんは気が乗らないから参加してない」ってだけなんだよね なんか全体的にその新人君「餌が落ちてくるのを口を開けて待ってたら埃がつもったのでなんで餌を落としてくれないんだ!とキレた」感じ ひたすら受け身で自分から動かない、動こうともしないというか まあそれも含めて、報告者の鳥取とは合わないんだろなぁと(見た感じ積極的に動くのを前提としてる感じがあるので) GMやらない、知らないシステムのルルブも買わないにしたってせめて「このシステムやりたいんですけど」ぐらいの主張するぐらいできると思うんだけど…… なんかそれすらあったのか疑わしいっぽいしなー… 366 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 08 55 21.91 ID ILellE6VO [2/11] 新人にしてみたら ソードワールドかクトゥルー出来るとこ探してた で、 報告サークルにしてみたら、 単発でいろんなゲームオンセでやる(時々オフあり?) だからボタンかけちがえなんだよなぁ 新人がソードワールドかクトゥルーのどっちかだけやりたかったなら ソードワールドオンリーやクトゥルーオンリーなとこ探したろうから 事故っちゃ事故な気もしなくもない まぁ報告見る限り残しとくとイロイロ困案件出しそうな新人だし そっと放逐していいんじゃない? ただ、めったに初心者に遭遇しないTRPG者は忘れがちだが 完全な初心者に、玄人相手のGMやれば発言は割と酷い注文だぞ 367 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 09 06 45.48 ID DhvBjVTYi [1/2] せめて早いうちから新人がGMできるようになるのを共通目標にしとくべきだったかな CoCはシナリオ作りのハードル高いけどSW2.0なら初心者でも結構何とかなるし それでも自分以外卓立てなくてGMしかできないんじゃ、いずれヘソ曲げたかも知れないけど… あれこれ理由付けてPL専でいたがったらその時はその時ってことで 369 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 10 27 41.31 ID DCK4u8il0 お互い問題はあるかもしれないが、合わないなら合わないでねちねち言っている奴のほうが困。 370 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 10 37 41.77 ID fKGMb/7D0 ウチも似たようなタイプの鳥取だが「これやろうぜ!」って持ち込む奴がメインでGMして布教するのが当然な空気があるなあ。 おかげで新人が入ってこないのか。反省材料にしよう。 今後はフリー公開されてるスペオペヒーローズとか蓬莱とかの無料システムも立てるようにするよ。 371 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 10 39 33.80 ID zRWDdMBU0 [1/5] 327 サークル側がもう少し早く気づけば、対処方法があったような気はしないでもないが、 その新人が自分勝手なこと言ってるのは間違いないと思うねぇ。 まぁ困というより単なる『お子様』(←年齢的or精神的に)な気がしないでもないけれど。 念のために書いておくけど、サークル側に対処しなければならない義務などないので 困であれお子様であれその新人の自己責任。 372 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 10 59 49.40 ID V9pPY6j10 [2/2] 370 蓬莱ってPBMやってた面子がいると設定知らないとなんで知らないの的な態度取られたことあるから恐ろしく敷居が高くなるイメージあるわ 373 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 01 07.97 ID ZBvjchC50 [2/3] 結局 360がFAかな。 362 SWとクトゥルフ以外に鳥取の定番システム(買って損のない稼働率)があるならともかく、 興味半分にいろいろ手を出してるのを他人に全部買えはねーわw 374 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 14 47.92 ID oTnUqZzZ0 [5/6] 369 そこは報告読む限りでは新人は離れたのに報告者がメール送るから 返信で恨み事が返ってくるんじゃないかな?新人を擁護する気はないが ねちねち言ってるのとはちがわね? 373 まあ新人も誘ってくれる人がいるんだから一回そのシステムでGM試して みたいのでルルブ貸してくださいあとPL参加でフォローお願いぐらい言えばいいと思う 社交辞令だとしてもメール送った手前無碍な対応されんだろうに 375 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 16 48.52 ID 817D/zPO0 そもそも疑問なんだが、鳥取って掛け持ちしちゃいかんのか 376 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 19 42.89 ID y8Idgp4r0 [1/4] 373 別に敷居は高くないだろう 複数システムのキャンペーン並行してるってんならともかく単発メインっつってるんだから、逆に言えばルルブあれば入っていける環境って事だろうし 377 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 22 18.33 ID bLZbsgxF0 [2/4] オンセベースの鳥取だと普通に掛け持ちアリだな 多くは週末に動きが集中するから、あまり多数の掛け持ちはきついと思うが 378 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 29 05.61 ID OOr5kwaY0 [1/4] 373 何で鳥取側が悪いと言い出す人が居るのか分からないな。 結局報告対象が、自分では動かない癖に、持ってるシステムで卓が立たないから勝手にハブられたと思い込んだだけじゃん。 持ってるシステムのGMは出来ません、鳥取からの募集待ちです。でも鳥取は色々システムやるんで参加できるものが無いです。 参加したいのに出来ないので不公平です、ルルブ所持者が鳥取共有物としてルルブを献上して下さい。自腹切るつもりはありません。 この主張を受け入れられない?この鳥取はルルブ持ってない人間をハブった挙げ句金使わせようとする鳥取だ! オンセもやるのにこんな主張する奴をどうしろと。 379 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 31 26.51 ID ZBvjchC50 [3/3] 376 >ルルブあれば入っていける それが敷居高いって言ってるんだよ! 381 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 36 44.59 ID 7dZB2YDv0 [1/2] 立卓頻度の高い一つか二つ押さえておくだけでもだいぶ変わらない? うちのオン鳥取にいる、ルルブが無料公開されてるシステム勧めても 「新しいルール覚えるだけでもハードル高いですよね」っつってくる奴みたいなことでなきゃいいんだが 382 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 40 58.36 ID 2BRSfpDm0 初っ端から「新システムやるからルルブ買え」だとちょっと勘弁だが、今回の報告の場合 いきなり買わせようとするんじゃなくてサマリー配るなりして何度かお試しプレイしてたんだろ? それで敷居が高いと感じるのが不思議で仕方ない 383 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 41 29.72 ID OOr5kwaY0 [2/4] 379 じゃあ持ってるシステムでGMやるかクレクレしろよ。鳥取にルルブ貸してくれる人居ないか聞けよ 持ってないなら持ってないなりに相談すれば良いだけの話だ 384 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 11 45 24.06 ID /Uf6QwuD0 379 じゃあ逆にお前の言う「敷居低い」サークルってどんなだよ 389 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 02 34.38 ID WVvELxND0 385 過去に「新作のルルブ買ったんなら、他のメンバーのために 全ページスキャンしてうpれよ」とか主張するサークル、みたいな報告があったのを思い出した 390 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 04 20.79 ID fg/RlgSK0 [2/2] 388 報告の上の方を確認してみるといい サマリーとか渡してのフォローは行ってる 391 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 15 23.51 ID HUi/Mn9q0 PLの被害妄想が強すぎるのが問題の大部分を占めてると思うが 最初から色々なシステムを万遍無くやる場所だから特定システム専業の人はやっていけない場所だよ って言ってはっきりと引導を渡してあげればよかったのにね やらないなら仕方ないとなんとなく放置した所はサークル側の過失に感じられた 392 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 19 13.29 ID y8Idgp4r0 [2/4] 391 金貰って面倒見てるんじゃあるまいし、遊びのサークルで放置したから過失とかねーわ 393 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 19 25.06 ID wFK6EItk0 複数システム扱うオンセサークルが敷居が高いとか初めて聞くわ 394 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 22 40.35 ID ULlL8xY50 仮にハードルが高いのが事実だとするなら、 システム特化サークルよりも、「普通のTRPGサークルのオンライン版」度合いが大きくなって、 そこで何か感じるところが変わる・・・・・・とか? 395 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 27 57.21 ID nWzX3yIM0 [1/2] 392の言う通り、遊びって事忘れてる奴多いような気がする 好きなもので好きに遊んでる集まりなのに わざわざサマリー渡してもらった他システムやGMやらずに自分のしたい事だけやろうとする奴の面倒見なきゃいかんのだ GMやる奴が偉いとは言わないが、PL専ならPL専で然るべき態度があるだろうに 398 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 38 22.39 ID SQTDxo5D0 [1/4] ぶっちゃけ報告対象が我侭なだけじゃないか 399 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 45 46.11 ID 6U+9Wsg30 [1/2] 特定システム専かつPL専ってだけならこのスレに書き込まれなかった 自分からは何の行動もしないのに参加できないのをイジメだとわめいて、鳥取側だけに一方的な改善を求めてるのがおかしい 400 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/02(木) 12 45 47.48 ID DhvBjVTYi [2/2] しかしまぁ長引くもんだね いつもの人もあまりあからさまな話じゃなくて、こんぐらい微妙なストーリー考えられたらもっとレス貰えるのに スレ397
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泣かないで、泣かないで、笑って! 第2話 照りつける暖かい日差しと、それに反したひんやりとした冷たい風。 夏季に入り、連日猛暑が続いているのだが妙に涼しい。 時折吹き抜ける風が周囲の気温を下げているのか、あるいは丘の下に広がる透き通った湖が熱を気化しているのか、おそらくはその両方であろう。 小高い丘には草原とゴツゴツした岩と所々に生えた針葉木しかない。 そんな自然の芸術で形成された風景に、につかわしくない人物が紛れ込んでいた。 「ふぐぅ…」 男が仰向けに倒れている。 赤いタンクトップに黒いジーンズ、黒く長い髪は適当にはねており、前髪だけ癖になっているのか目元で分かれている。 筋肉質では無いが、身体は引き締まっていて、顔立ちは悪くは無いが、特別良いと言えるほどでもなくこれといった特徴が無いのが特徴であった。 男の周囲には投げ出されたままの状態のギターケースが転がっている。 いつからそこにいたのか、男自身にもわからない。 男は太陽の眩しさから目をそらすように体を横に転がした。 「……」 冷えた風が吹き抜ける。 無意識に身体を丸め、男は体温を保持しようとする。 しかし二度三度と襲い来る寒波に、男は耐え切れず、薄く目を開いた。 最初に男の目に入ったのは一面の若草の緑。 続いて、ヒノキだかスギだかよくわからないところどころに生えた針葉樹とこぶし大から男の背丈ほどもある岩。 立ち上がってみると、高台になっていたらしくそれほど離れていないところに針葉樹の森と、反対側の丘下に大きな湖があった。 「……ふぁ」 未だに寝ぼけているのか、男は現実感の無い風景をあっさりとうけとめた。 そよそよと頬を撫でてくる風が気持ちいい。 男のまどろんだ脳が冴え始めてくる。 それと同時に生じてくる違和感。 なぜここにいるのか、と男の頭に浮かび、家に帰った事も覚えてない、と男は考え、むしろ帰ってたっけ、と男に疑問が生じ、これは夢だなと男は結論付けた。 思考は一瞬。 そして男は両足を投げ出して地面にへたりこんだ。 「……んなわけねーじゃん」 太陽は変わらず眩しかった。 どーしよっかなーっとふざけた様に呟き、およそ真剣に見えない顔で白痴の様に呆けていた男は、ふと気づく。 「っ、携帯!」 男は慌ててジーンズのポケットに手を突っ込んだ。 心情では相当焦っていたのかその行動は素早い。 労せず触れる硬質の感触。 ジーンズから携帯電話を引っこ抜き、液晶画面を確認する。 暫く携帯を凝視していた男は視線を外し、仰向けになり空を見上げた。 「……お約束だよな」 携帯の電波は圏外を示していた。 携帯を仕舞い、男はふて腐れた。 「どこなんだろ、ここ……」 寝そべりながら呟く。 頬に触れる若草がこそばゆかった。 どれ程の時間が経ったのかわからない。 男は体を起こした。 景色は相変わらず森と山と湖。 携帯電話の画面で時間を確認すると、先ほど確認した時間から二時間ほど経過していた。 こんな見ず知らずの安全っと決まったわけでもない場所で無駄に時間を使ってしまった自分の神経の図太さに、男は頭を抱えた。 ひとしきり己の馬鹿さ加減についての後悔を終えた男は、投げ出されていたギターケースを手に取る。 おもむろにケースを開き、アコースティックギターを取り出す。 「げっ……弦が切れてやがる」 五弦目の弦が千切れ飛んでおり、羊司は相棒の無残な様子に軽く凹んだ。 ギターケースにしまっていた替えの弦やピン抜き、ニッパーなどを取り出し弦交換に移る。 何度も弦を交換してきたのか、その手順は鮮やかである。 程なくしてギターが元通りになる。 「調律は、と……」 何度か弦を弾き、音がずれていないか確かめる。 チューナーが無いのが痛いが、高校時代から愛用していた楽器だ。 完璧とは言えなくてもある程度はわかる。 調整は終わり、何度となく練習した得意のフレーズを引いてみる。 慣らしていないので少し五弦が強いが、仕方が無い。 次第に気分が高揚し、抑え目に弾いていたギターを鳴らす音量も大きくなっていく。 明るい曲、悲しい曲、楽しい曲、寂しい曲。 手馴れた様子でギターを操り次々と曲を変え、男は気付かないうちに声を出し、歌いだした。 歌うことが好きだった男は高校一年の時からプロのミュージシャンを目指している。 親には大学に進学して就職しろと反対され、友人には無謀だやめておけと止められた。 周囲の人間の態度に嫌気が指した男は、卒業して家を飛び出した。 幸い高校時代に無駄遣いせずに貯めた貯金で安いアパートを借りることができ、男はバイトとギターの練習で日々をめまぐるしく過ごしている。 日々研磨し努力した賜物か、男の声は周囲によく響いた。 そして、その歌声に惹かれるものが一人。 灰色の外套姿で、フードを目深に被っている為、男か女か区別がつかない。 周囲の木と岩影に隠れながら少しずつ近づいてくるが、あまりにも隠れ方がお粗末過ぎる。 とはいえ、見ているとなかなか面白いので男は気づかない振りをしながらギターを弾いた。 男はそろそろいいかなと思い、楽器を鳴らす手を止める。 木陰から飛び出そうとしていた矢先、音楽を止められ、間抜けな姿で静止する。 その距離およそ10メートル。 外套を着た者と男の視線が重なる。 「あ、あぁ……」 少女特有の高い声。 男の心の中で前面の外套の中は年若い女の子と結論を下した。 「あの……」 黙っていても仕方ないと思い、声をかけようと一歩踏み出す。 その瞬間少女は脱兎のごとく逃げ出した。 「わっ、待ってくれ!」 ギターを置き、起伏にとんだ丘に足を取られながら、男は慌てて追いかける。 「っ! 来ないでっ!」 少女は振り返り、男が追いかけてくるのを見て涙声で叫んだ。 「来ないでっ、追いかけて来ないでっ!!」 「頼む、何もしないから逃げないでくれ!」 静止する声を無視し、少女は逃げる。 「なあっ、ここは何処なんだ!?日本だろ!?」 「違いますっ、来ないでっ!!」 少女の答えに納得できず、男はさらに声を荒げた。 「そんな訳ないだろっ! あれかっ!? 北朝鮮か!? 拉致かっ!?」 「知らない、知らないっ!」 必死で男も追いかけるが、一向に距離は縮まらない。 凹凸の激しい丘を、少女は全く速度を落とさずに駆け下りる。 自分より華奢で小柄な少女を、声を上げ追いかける自分の姿はどう見ても変質者だと思い、男は泣きたくなった。 少女はマントを大きくはためかせ、もう二度と振り返らずに走っていった。 「待ってくれよ……頼むから」 丘を抜け、鬱蒼と茂った森の中で、男は息も絶え絶えに呟いた。 既に、全力疾走ではない。 落ちていた長い木の枝を杖代わりに歩いていた。 気温は低めだが、先ほどの鬼ごっこのせいでかなりの汗を掻いている。 べたついたシャツを鬱陶しく感じながら、時折つま先で土を削る。 道しるべ、のつもりだ。 「なんで……歌聴くときは寄ってくんのに……話し掛けたときは、逃げんだよ……」 苦しげに男は言う。 それにしても、と男は思う。 全力で走っている自分は、別段運動部に所属していたわけでも、特別に体力に自信があるというわけでもない。 学生時代と違い、確かに運動不足はいなめない。軽い筋トレぐらいはしているが、それも軟弱に見せない為の見せ筋を維持する為だ。 しかし、いくらなんでも15、6の少女に、足の速さで負けるほど身体も鈍っちゃいないだろう。 しかし、追いつけなかった。 少女の姿はとうに見失った。 別段勝利に固執する性格でもないが、やはり年下の少女に走り負けると言うのは悔しく感じる。 それでも少女の姿を追い求めるのは、流石に少女も追いつけなかったとはいえ自分と同じ様に体力も落ちて歩いているだろうから、もしかしたら追いつけるかも、と考えたから。 また、走っていった方向に少女はいなくとも、街か何かがあったら誰か住んでいるだろう、とも思ったからだ 「待ってくれてもいいだろうよ、あそこまで怖がられたら流石に俺も傷ついたぞ…」 沸々と理不尽に逃げた少女に対する怒りが募ってくる。 「逃げるぐらいなら近づくなっての。 声かけただけじゃんよ」 男も自分の言葉が理不尽と言う事はわかっている。 しかし言わずにはいられない。 「自分だって変な外套を着て、おかしいだろ……それな――」 突然男は愚痴を止め、身体を木に隠し息を潜める。 慎重に首だけを伸ばし、目標を確認する。 そして心の中で歓声をあげた。 見つけた、さっきの少女だ。 少女はブナの様な木の傍で、両足の膝を地面につけ何かを熱心に覗き込んでいる。 左手には外套に半分隠れているが、円形のザルの様な物を持っている。 男は声を殺して、回り込みながら静かに少女に忍び寄る。 少女は気付いていないのか、暫く木の根元を観察していると、思い出したかのように右手で土を掻き分け始める。 興味をそそられたのか、男が身体を横にそらし少女の手元を見ると、毒々しいイボ付きの赤いきのこがそびえ立つ様に生えていた。 少女はそれを嬉しそうに籠に入れる。 男の顔が引きつる。 少なくとも、こんな毒々しいきのこは自分なら絶対に食べない。 頭が錯乱するか、腹筋がねじれるほど笑い転げるか、下手をすれば死んでしまう。 声をかけるか、否か。 声をかけなかった場合、殺人補助になるのだろうかと男は悩む。 流石に人道的に問題があるだろうと思い、男は少女の肩に手を伸ばす。 声をかけて、逃げられるのはもうこりごりだった。 しかし、肩に触れる前に少女の顔を見て、息を呑んだ。 男が驚くほど少女の顔は整っていた。 ふっくらとした唇、現役のアイドルも羨む様なすっと長い鼻立ち、見るもの全てを慈しむ様な穏和そうな目。折れてしまいそうな細い指を一生懸命動かし、土を掻き、キノコを引き抜く姿は、非常に微笑ましい。 ボロボロの外套に隠れてはいるが、時折除く髪は白髪と呼ぶにはおこがましいほどに美しく、ふわふわと波打っている。 「うわっ……超かわいい」 先ほどの少女に対しての批難する様な愚痴や危なそうなきのこの存在すら忘れ、男は知らず呟いていた。 「!?」 その瞬間、少女が小さな肩を竦ませ、男の方を向いた。その顔には明らかに恐怖の色に染まっている。 少女の震える指から籠が滑り落ちる。 底の浅い円状の籠から、男が見た事もない野草やまだら模様のきのこが零れ落ちた。 「あ、あぁ……」 迂闊だったとしか言いようが無い。 テントの方へ真っ直ぐ逃げてしまった。 男から完全に逃げ切ったと思い込んだ。 貴重な食料に気を取られ、男の接近を許してしまった。 少女は膝を地面につけた状態で外套を握り、身震いしながら自身の行動を悔やんだ。 少女が肩を震わせ、大きな目に涙を溢れさせる姿に、男は酷く動揺した。 「な、泣かないで! ちょっと道を知りたいだけなんだ! 教えてくれたらすぐに消えるからさ! 大声出して追いかけてごめん! 黙ってこっそり後ろから近づいてごめん! 謝るから泣かないで! あと、そのきのこは食べない方がいいと思うよ、うん!」 男は自分でも何を言ってるのかよくわからないが、ひたすら謝ってみる。 少女は何も答えない。 「本当にごめん! 怖いならもう少し離れるからさ、せめて逃げないで」 そう言って男は伸ばしたままになっていた腕を引っ込め、前を向きながら器用に後ずさった。 宥めて卑屈になって。 男はなぜこんなに必死になっているんだろうと思う。 ただ言えるのは、罪も無い女の子を泣かせるのはどうしてもごめんだった。 「本当に……何もしませんか?」 男の願いが通じたのか少女が顔をあげ、初めて自ら声を出した。 「しないしない、絶対に危害を加えないってば」 少女は男に対する警戒心が抜けていないのか、未だに顔を伏せている。 初めて会話への糸口が見つかった男は、必死で自身の無害さをアピールする。「ええと……さ、変な事を聞くようだけど、ここって日本だよね?」 男が少女の顔色を窺いながら、尋ねる。 脅かさないように、泣かせないように。 少女は幾分か迷いながら、答えた。 「……いえ、ここはフィルノーヴ。 ニホン、という国ではありません」 「いや、でも俺さっきまで日本に……っつーか東京にいたんだけど」 「はぁ……」 少女はよく意味を理解しきれていないのか、首を傾げ曖昧に相槌を打つ。 「こっちに来て目を覚まして、日付見ても一日やそこらしか経ってないから……あれ? 日本からブラジルまで24時間で行けたっけ?」 「よく、わかりません……あなたが何を言ってるのか……」 「まあ、どうみてもブラジルじゃなさそうだし、どうでもいいんだけど。 あー、つまり……ここってどこかな?」 「で、ですからフィルノーヴです」 「そんな国聞いたこと! ……いや、大声出してごめん。 泣き顔で怯えないで……」 「グスッ……本当です。 この土地はネーモアと自然に囲まれた大きな国です。 本当に……知らないんですか?」 男は頬を頭を掻きながら少女の言った単語を思い出そうとする。 フィルノーヴ、ネーモア、全く思い出せない単語に男は恥ずかしそうに質問した。 「あの……無知でごめん。 フィルノーヴ、とかネーモアってさ、本当に、何、かな?」 その言葉に今度は逆に少女が驚いた。 大きな目を見開いて、男の顔や服装、一挙一足を観察する。 少女の慌てた様子に、男は少女に呆れられていると勘違いし、自身の常識の無さを恥じた。 「えっ……まさか」 「ごめん、今度からちゃんと現代社会についても勉強するから……」 少女が被りを振る。 そして初めて申し訳なさそうに言った。 「あ、いえ……すみません。 ヒト……だったんですね」 少女の言葉に男は呆然とする。 そして次第に怒りも沸いてくる。 人だったのか、だと? どこからどう見たら人間ではないと思えるのだ。 人が下手に出ていればいい気になりやがって。 どうしてここまでコケにされないといけないのか。 馬鹿にするのもたいがいにしろ! そろそろ少しぐらい叱るべきなのかもしれない。 男は激憤に駆られた表情を隠そうともせずに少女を睨んだ。 男の憤怒の表情に気付いた少女は、恐怖の満ちた顔を涙で濡らした。 両手で胸元の外套を握り締め、まるで親に叱られる子供のようにきつく涙で溢れた目を閉じ、震えながら頭を垂れる。 その姿を見ると、男も怒る気力を無くしてしまう。 「はぁ……俺が悪かったから、そんなに怯えないでくれ。 あと、俺を人間扱いしてくれると嬉しい」 少女は上目づかいに男の表情を確認すると、首を小さく振った。 縦に、そして横に。 「……それで、フィル……なんたらとネルモアって?」 男にもう反論する気は無かった。 早く話しを済ませてしまおうとばかりに質問する。 「……フィルノーブは北寄りのオオカミやクマ、他にも多数の部族が多く住む土地で、森と山に囲まれた国です。 独自の集落の多いこの国は、その土地特有の果実や珍しいイキモノが数多く生息しています。 ネーモアはこの土地一番の大きな湖で毎年この時期になると珍しい赤い顔の白い鳥が群れを成して集まり、数多くの見物客で賑わ――」 「それで、この辺りで一番近い街は何処だ?」 少女の説明を遮り、男は最も知りたい事を確認する。 「なんでこんな国に居るのか、理由は後で考える。 とりあえず電話さえあったら日本の実家に連絡できるから」 「デンワって何ですか?」 「電話は電話だ。 んで、銀行に振り込んでもらって下ろして、飛行機で日本に帰る。ビサなら使えるだろ」 「ギンコウ? ヒコーキ? ビサ?」 少女は本気でわからないのか、首をかしげている。 男は次第に苛つき始めるが、表情を押し殺しながら尋ねる。 「すまん、遊んでいる暇は無いんだ。 とりあえず街はどこだ?」 「はぁ……ここから700ケート程南に行ったところにオオカミの集落がありますからそこに」 「舐めてる?」 「いえ、そう言われましても」 少女は困ったように頬を人差し指で掻きながら答える。 不機嫌そうな男に言うべきか言わぬべきか迷っていた。 意を決し、少女は口を開いた。 男の目から若干視線を逸らせながら。 「ええと、怒らないでくださいね。 あなたは帰ることが出来ないと思います」 「何だって?」 「ここは、いえ、この世界には貴方の言うニホンという国は何処にもありません」 森に静寂が宿る。 男は怒鳴り散らしたくなるのを堪え、少女に尋ねる。 「……冗談にしては面白くないぞ」 「本当です。私自身、始めて外界から来たヒトを目にしたのですから」 「よくわからない。 君は人間だろ?」 男は当然の疑問を口にする。 「ええ、私はニンゲンです」 ただしと口にし、少女は被っていた外套のフードに手をかける。 そして、フードを脱ぎ、隠れていた後ろ髪に手を入れ、サッと後ろに流す。 男は白というより銀に近いウエーブの髪をなびかせる少女に目を奪われた。 否、正確には少女の顔の横についているものに目を奪われた。 それは横に長く伸びた大きな耳。 「私はコリン・ルーメリー・ユイーフア。 普通の、ヒツジの女の子です」 男は声を失った。 頭が理解に追いつかない。 この世界に日本が無くて、そして自分はヒツジの女の子? 頭を掻きながら男は考える。 少女、コリン・ルーメリー・ユイーフアは佇みながら男の反応を待っている。 「ええっと……その耳、よく聞こえそうだね?」 結局、男には無難な話題を出すしかなかった。 「え、はい。 ヒツジですから」 「そっか。 羊か」 「はい、ヒツジです」 あははーっと声を上げ、お互い笑いあう。 そして男が笑顔でコリンに問う。 「ところでさぁ、どこからどこまでが本当?」 「全部ですよ」 コリンの答えに男はブチギレた。 「あーっ、マジですまんかった。 むしゃくしゃしてやった。 今は反省している」 男が髪を掻きながら、あまり反省してそうに見えない顔で謝る。 ビクビク怯えながらコリンは両手で頭を抱えてしゃがみこんで、本当ですかぁと涙声で言う。 その姿に怒鳴ってしまって悪いことをしたと思いつつも、心の片隅でもっと苛めてみたいと不謹慎にも思ってしまう。 「えーとだな。 とりあえず俺自身、正直半信半疑で君から聞いたことを纏める。 ここは狼の集落の近くで、羊が人で、この世界には日本は無いとかそんな風に聞こえたんだが、もう一度聞くぞ。 本当か?」 「は、はい。 正確に言えばウサギとオオカミの、若干オオカミの国側の大陸です。 ニホンという国は……ごめんなさい、本当に無いんです。」 男の嘘は許さんといった威圧する目にコリンは怯えながらも何とか言葉を紡ぐ。 腕を組む男の沈黙を続けろと受け取ったコリンは話を続ける。 「私はヒツジですが、この世界には様々な種族がいます。 先ほどから何度か言いましたオオカミやウサギ、クマなど多数の種族がいますがみんな人間です」 「ちょっ、ちょっと待ってくれ」 話を遮り、男は慌てた様子でコリンに問う。 「どうみても君、えーっと……コリンさんは人間だろ? 変わった耳飾りみたいな物をつけているだけだろう? 日本語を話しているし、その姿はどうみても人にしか見えない」 「いいえ、私はヒツジです。 この耳は飾りではないですし、私以外にもそれぞれの種族の特徴を持つ人間はいます。 それと私たちが話している言葉はこの世界の共通語で昔から使ってきました。 むしろ、なぜ貴方の言葉が私に通じるのか、それが全然わからないんです」 「……人って人間って事だろ?」 「うまく説明できませんが、ヒトは貴方です。 そして、人間は私たちなんです。」 男は自分の額を手で覆う。 理解しかけているが、理解できない。 そんな態度が現れている。 「今から貴方にとって非常に心苦しいことを言います。 その、怒らないでくださいね?」 コリンが言いづらそうに男に確認を取る。 慌てて男が顔を引き締める。 「落ちる、この世界に強制的にやってくる、という意味なんですが、この世界に貴方は落ちてきました。 外界から落ちてきた人間を私たちはヒトと言います。 ヒトがこの世界にやって来ることは稀で、落ちてきたヒトには一切の人権はありません。 つまり……ヒトと言うのは奴隷や家畜の別称なんです」 「はぁっ!?」 素っ頓狂な声を出し、男は少女を間の抜けた顔で見た。 「ヒトは奴隷という所有物ですから、傷つけ、苦しめ、壊しても罪には問われることはありません。 それと、私自身ヒトを見るのは初めてなのですが、ヒト奴隷はとても高価なものだと聞いた事があります。 人里に入れば確実に、貴方は捕まり売られるでしょう」 男の中で何かが崩れていく音が聞こえた。 何処にも行く当ては無い。 頼れる縁者もいない。 街を歩くことも出来ない。 住む当ても無い。 食べる事すらままならないだろう。 たった一人でこの世界をどう生きていけばいいのか。 「嘘だろ? なぁ……これって嘘だよな?」 男がコリンに詰め寄る。 コリンの両肩が強く揺さぶられる。 「いいえ……すみませんが……」 「帰る方法は……」 「聞いたことが……ありません」 コリンは首を横に振り、男の望みを絶つ。 男はこの世界に絶望し、いたずらな神を呪う。 悲観にくれる男の涙が少女の外套を濡らした。 「私と、一緒に来ますか?」 彼女は言った。 男は涙でくしゃくしゃになった顔を隠そうともせず、少女の顔を窺った。 「私は、一つの町へ定住することはせず、リャマのクトと一緒にいろんな国を旅して回っています。 いろんな国を調べたら、もしかしたら元の世界へ帰る手がかりが見つかるかもしれません。 もし宜しければ、一緒に、行きませんか?」 少女は震える身体を優しさで押し殺し、笑みを浮かべ男に言った。 不安なのだろうと男は思った。 この少女は怖がりだ。 おどおど辺りを窺って、何かに怯えて生きている。 この少女は泣き虫だ。 今日、初めて会ったのに何度泣かせたかわからない。 そしてこの少女は―――とても優しい。 少女の性格からして、ヒト、しかも男と話をするのは怖いだろう。 安全面からも、非力で高価なヒトと旅をするなんて危険極まりないだろう。 金銭面、生活面でも迷惑をかけるだろう。 少女の事を思うなら、一緒に行かないほうが良いに決まっている。 しかし、 しかし、それでも―― 「浅草羊司です。 よろしく、お願いします。 コリン様」 「こちらこそよろしく、おねがいします――ヨウジさん」 一人は、嫌だ。 私の住処へ案内します、とコリンは言った。 落ちた籠に山菜を詰めなおした後、落とさない様にしっかりと両手で持ち、フードを被り直した後、先導する様に歩き出した。 そして少女の数歩後を羊司がついていく。 辺りはかなり日が落ちており、夕焼けが世界を柔らかく包む。 「えーっと……コリン様」 足早に歩くコリンに羊司は、先ほどから懸念していたことを伝えようと声をかける。 「あのっ、ヨウジさん、私に敬語なんて使わなくても……」 表情は伺えないが、声質は困ったという感じが滲み出ている。 「あ、いや。 そう言わないとまずいと思うし」 「一応は主人ですけど、強制はしませんから……ただ、人前で気をつけてくだされば」 コリンが言うには基本的に自分、浅草羊司はコリン・ルーメリー・ユイーフアの所有物になるそうだ。 本人は酷い扱いをしない、敬語は使わなくていいと言っているが、人前だとどうしても建て前というものがあるので、その時だけ、奴隷としての行動を取ってほしいと言う事らしい。 どうも俺は過剰に意識していたらしい。 「あー、わかった。 人前では敬語で様付け。 でも今は敬語も様もいらないんだな?」「はい。 私は普通の、ヒツジですから」 なぜか普通を強調するコリン。 「よく意味がわからんが、わかった。 改めてよろしく。コリン」 「はい。 ヨウジさん」 微かに笑みを浮かべるコリンの姿に、羊司の頬がわずか朱に染まる。 「そ、そうだ、コリン。 ギターを丘に忘れたんだ。 取りにいかないとまずい」 表情の色を悟られたくない羊司は、慌てた様子でコリンに言う。 「ギターって、あのヨウジさんが弾いていた綺麗な音色の楽器ですか?」 「そう、それ。 雨なんて降ったらお釈迦だし、朝露にでも濡れただけでも相当やばいんだ」 頭を少し下げ、考え込むコリン。 しかしすぐに顔を上げ、わかりましたと了承し、先程の道に踵を返す。 「おおっと、その必要はないぜ」 「え!?」 「!?」 突如、羊司でもコリンでもない野太い声が周囲に響き渡り、一本の木の陰から二歩足で立つ、全身毛むくじゃらの狼が姿を見せた。 狼は上半身を黒い鎧を着て、麻の様な素材で出来たズボンに一振りの長い剣を刺している。 「ちょーっとばかし席を外している間におもしれぇ事になってやがるな」 「誰だ、あんた?」 羊司が身構え、警戒心を顕にする。 コリンは極度の人見知りと恐怖で震え、せっかく拾いなおした山菜の籠を取り落としている。 「んー、んー、んーー? 口の利き方がなってないガキだな。 せっかくお前の楽器を拾ってやったのによお?」 よく見ると羊司のギターケースが、巨漢の狼男の肩にかかっている。 羊司は驚き、礼を言おうと一歩前に出る。 「あ、すみませ――」 「まあ、俺が拾った落ち物だから俺のもんだがよぉ。 あと、目的ついでに目の前の落ち物も拾っておくか」 目の前の狼男が何を言っているのか羊司には理解できなかった。 目を瞬かせ、伸ばしかけた腕を止める。 「理解できねぇか? つまり、お前の物は俺の物。 さらに言うならお前は俺の物だって事だ」 羊司の背筋が凍る。 女に告白された事すらないのに、毛むくじゃらの身長がゆうに2メートルを超す狼男に告白されるとは。 どうすれば相手が傷つかず、なおかつ穏便に断れるか、羊司は必死で頭を巡らせる。 羊司の後ろではコリンが頬を染め、はっと何かに気付き、必死で頭を振っている。 「怖いか? 心配すんな、大人しくしていれば危害はくわえねぇ」 獰猛そうな顔に笑みを浮かべ、狼男は羊司に向かってにじり寄る。 「ええと、貴方の気持ちは大変嬉しく思いますが、俺は男でありヘテロなので、貴方の気持ちに応えられないというか近寄んなガチホモがとか思っちゃったりなんかして――」 「はぁ? 何をわけのわからん事を……」 脂汗を流す羊司にコリンはタンクトップを少し摘み、数度引っ張る。 「ヨウジさん、想像してる事はなんとなく理解していますが、多分羊司さんの考えている事とあの人の言っている事は違いますよ」 狼男に聞こえない様にコリンは言った。 「いや、でもさ……お前は俺の物ってどう考えても」 「ヨウジさん、貴方は物です。 つまりあの人は、貴方を手に入れて奴隷商人にでも売るつもりなんですよ。 あとギターも返す気も全然無いです」 羊司にもようやく合点がいった。 そしてゆっくり近づいてくる狼男を睨みつける。 「お前、俺を売り飛ばす気だったのか」 吼えるように羊司が狼男に言う。 狼男はニヤニヤと笑う。 「悪く思うなよ。 最近懐が寂しいもんでね。 あと、さっきも言ったように、おまえはついでだ。」 「ふざけんな! 誰がお前なんかに……」 言い切る前に狼男の膝が、羊司の腹にめり込む。 「ぐ、あ……ぅ……」 「少し黙ってな。 ボウズ」 5メートルの距離から一瞬で距離を詰められ、ろくに受身すら取れず膝をいれられる羊司。膝をつき激しく咳き込む羊司を無視し、狼男はコリンに近づく。 「い、いや……」 コリンは足がすくみ、悲鳴を上げることすら出来ない。 狼男がコリンににじり寄っている姿を羊司は苦悶に満ちた顔で睨む。 背中から突き刺さる弱々しい視線を軽く流し、狼男はコリンの前に立ちはだかる。 「さて、こいつはまあ思わぬ副産物だとして、本題はあんただ」 ヒターケースを放り出し、巨体の狼男の視線が鋭くなる。 「んな外套と人目につかねぇ道通るだけで誤魔化せると思ったか? オオカミの鼻舐めてんじゃねぇぞコラ」 狼男はコリンのフードを掴み、力任せに下ろした。 抵抗する暇もなく、少女の端正な涙に濡れた顔が顕わになる。 「ひっ……」 「自己紹介が遅れたな。 俺はゴズマ・ガンクォ。 誇り高きオオカミの国の戦士だ……とはいえ、城に仕えても乱暴すぎるって理由でたった二月で解雇されたがな」 オオカミの国の人間は基本的に粗暴だとコリンは聞いている。 しかし二月で城勤めを止めさせられるなど、いったいどれ程の事をしたのだろうか。 ブルブルと震えきつく目を閉じるコリンを笑いながら眺め、狼男、ゴズマ・ガンクォは話を続ける。 「傭兵になった俺はある日、妙な手配書を見た。 内容は、前年滅んだ自然公国ルブレーの美姫、コリン・ルーメリー・ユイーフアの身柄についての件だ」 そう言って、ゴズマは腰につけた小型の鞄から、巻物状に曲げられた紙を取り出した。 「ルブレーは滅び、王と后、その娘と息子の殆どが殺された。 だが、臣下に命がけで助けられ、崩壊する城から逃げおおせた姫もいた……わかるよなぁ?」 コリンの顔は既に蒼白になっている。 「コリン・ルーメリー・ユイーフア、生死を問わずワーグイシュー国、大臣、ハンムギーの下へ連れてきた場合……」 スルスルと紙を開く。 「40万セパタだってよぉ!」 そこにはコリンの顔が映っていた。 「全く俺はついてるぜぇ。 たまたま、その手配書を見た日に王女様の姿を見かけて、自分から人気の無い森に入ってくれて、さあ殺ろうと思った矢先、落ち物が現れた。 これも俺の日頃の行いの賜物だな」 下品に笑い声を上げるが、目は笑っていない。 「あ、あぁ……」 「どうした? 姫さん。 さっきからまともに喋ってねぇじゃねぇか」 ゴズマはコリンの肩に手をおき、顔を覗き込む。 「わ、わ、私は……」 「私は? 続きはどうした? 早く言えよ」 「私は……私自身、姫かどうか、覚えていない……」 「はぁ!?」 コリンの言葉にゴズマは素っ頓狂な声を出す。 これはコリンの苦し紛れの嘘だった。 人違いだったらもしかしたら見逃してもらえるかもしれない。 あまり要領が良いとは言えない頭でその場で考えた出まかせ。 しかしあまりにも稚拙な出まかせ。 「お姫さまじゃねぇのか?」 ゴズマはコリンの首袖を掴んで、詰め寄る。 コリンより圧倒的に背の高いゴズマが、少女の身体を軽々と掴み上げる。 「うぐっ……わからないんです……記憶が、無いから」 「何時からだ!!」 「は、半年前……」 「なんで手配書の人相書きと似てやがる!?」 「知ら、ない……」 「っちぃ!」 周囲の木に背中から叩きつけられ、コリンは苦しそうに言った。 喉を鳴らし、威嚇するゴズマの様子に、コリンの瞳から大粒の涙が流れる。 その涙を見て、ゴズマは動きを止める。 そして何を思ったか、しばらくの間涙を流すコリンを眺めていた。 「……はぁ、わかったよ」 急にゴズマが、疲れたようにコリンの首元から手を離す。 ズルズルと木に背中を擦りながら、コリンの身体が大地に触れる。 「けほっけほっ……えっ、あ……?」 突然離された手に、コリンは騙せたのかと思った。 「いや、本物か偽物かどうでもいい事を思い出しただけだ」 ゴズマの言葉にコリンの血の気が引く。 「死体に口無しってな。 姫さんじゃなかっても、そんだけ似てたらばれやしねぇだろ」 「そんな……」 「運が悪かったな、知らねぇ誰かさん……さあ、おしゃべりは終わりだ。 苦しまず殺してやる」 ゴズマは腰の飾り気の無い長剣を抜き、上段に構える。 「た、助け……」 「残念ながらそれは無理だな。 逃げられても困る……諦めて死ね」 コリンは涙を流し命乞いするが、無常にもゴズマの長剣が振り下ろされる。 コリンは死を覚悟して目を閉じた。 森に鈍い音が響き渡る。 「う……ぐ……」 コリンは迫り来る死の顎がなかなか訪れず、おそるおそる目を開く。 「この……ガキィ!」 「コリンに……手を出すな!」 コリンの瞳に羊司が荒い息を吐きながら、太い木の枝を持ってゴズマを睨みつける姿が見えた。 横合いから頭を強烈に殴られ、頭を抑えているゴズマの長剣は、コリンのすぐ隣を通り過ぎ大地に刺さっていた。 「奴隷の分際で舐めた真似しやがって……」 「うるせぇっ!」 羊司はもう一撃入れようと木の枝を振るう。 「舐めんな糞ガキ!」 ゴズマは利き手ではない方の腕で木の枝を防ぎ、長剣を離して空いた手で羊司を殴りつける。 「うがっ!」 ゴズマに派手に吹き飛ばされ、羊司は何度も地面を転がる。 転がるたびに地面に血の跡が残った。 樹木に背中から激突し、羊司は一瞬息が出来なかった。 「ヨウジさんっ!?」 コリンが巨体のゴズマの脇を掻い潜り、羊司の元へと走る。 「ゴホッ、痛ぅ……」 「大丈夫ですか、ヨウジさん!」 仰向けに倒れる羊司。 何とか起き上がろうとする羊司を気遣い、悲鳴に似た声を上げるコリン。 羊司はふらつく足で立ち上がりゴズマを睨み、殴られても放さなかった木の枝を構え直す。 「手癖の悪ぃ奴隷には、躾が必要だな」 痛みの残る首を何度か回し、ゴズマは地面に刺さった長剣を引き抜き、真っ直ぐと羊司とコリンの方へ歩いてくる。 逃げ出したい気持ちを抑え、羊司はコリンを庇うように立つ。 コリンは顔を上げ目を開き、驚いた表情で羊司の顔を見ようとするが、背中からでは羊司の顔を窺う事は出来ない。 「コリン……今から俺の言うことをちゃんと聞いてくれ……」 羊司はゴズマから視線を外さず、背中越しに小さな声で言った。 「考えてみれば意外だな。 なんでお前がそこの姫さんを庇う必要があるんだ? 奴隷になる事には変わりないし、もしかしてヒトごときが惚れたか?」 コリンを庇う羊司に興味が惹かれたのか、ゴズマはからかいを交え羊司に尋ねる。 羊司は枝を強く握り、言った。 「お前に言う、必要はねぇよ……」 「まぁ、それもそうだな。 大方姫さんに優しい優しい言葉を掛けられたってとこか」 羊司は黙ってゴズマの言葉を聞いていた。 「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」 「コリンは悪くない」 羊司が声を押し殺して言う。 「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺はコリンのことが――」 途端、コリンは一目散に森の中を走り出した。 羊司をその場に置きざりにして。 その後姿を見て、立ち尽くす羊司。 「はっはっは。 そうか、お姫さんは悪くないか。 お前のお姫さん、奴隷を放っぽって逃げちまったぞぉ?」 足音が遠ざかるが、ゴズマには自慢の鼻がある。 追うのは容易い。 「コ、コリン……」 「哀れだなぁ、おい。 信じた瞬間に裏切られてやがる」 「コリンは裏切ったりしない!」 「俺は間違いなくこうなると思ってたがね」 ゴズマはコリンの行動を半ば予想していたのか、笑いながら長剣を構える。 「さて、いい加減暗くなってきたな。 闇市が始まる頃だ。 お前を売った金で酒も飲みたいし、姫さんを追わんといけねぇから、さっさと終わらせるぜ」 羊司は距離を取りながら身構える。 「抵抗するだけ無駄だと思うがなぁ」 その距離15メートル弱。 先程羊司が不意打ちを食らったときよりも10メートル程長く離れているがゴズマなら一瞬で詰められるだろう。 「うっせぇ、駄犬!」 「あん?」 実力に完全に差が開いている今、抵抗しないことが羊司にとって最も良い選択肢であろうが、羊司は声を張り上げゴズマを挑発する。 「さっきから、マジでやかましいぞ、駄犬……首輪つけられて頭撫でられたく、なかったら、かかってこいよ!」 その言葉にゴズマの顔が引き攣る。 「俺はな、誇り高きオオカミの戦士だと言ったぜ……もう一遍言ってみろ糞ガキ!!」 羊司はしゃがみこみ、左手で足元の腐敗土を握り立ち上がる。 「狂犬病か……末期だな、頭どころか耳までおかしくなってやがる……」 オオカミである自分より力も体も圧倒的に劣っているヒトに馬鹿にされ、ゴズマは激怒した。 「……売っ払うのは止めだ、ぶっ殺す……死んで詫びろガキィィ!!!」 ゴズマは怒りの咆哮をあげ、羊司を袈裟懸けにしようと長剣を構え走り出した。 木の枝をゴズマに投げつけ、羊死は背中を向け逃げ出す。 「おおおぉぉぉ!!」 顔を目掛け飛んできた枝を難なく叩き落とす。 そして返す刃で羊司を切り上げようとする。 即座に左手の土をゴズマにぶつける。 「ぶっ、糞がっ! 目潰しか!!」 まともに顔面から湿った土を受け、普段感じることの無い目の痛みにゴズマの動きが鈍る。 殺してやる、とゴズマが叫びながら目を擦っている間に、羊司は全力で森の奥へと逃げる。 「ちぃっ、この。 待ちやがれ!」 ゴズマも追いかけるが、思うように視覚が安定しない。 また、羊司はあえて狭い道を通り、巨躯のゴズマは樹木に道を遮られ、思うように走る事が出来ない。 自慢の鼻も立ち聳える樹木には無力の様だった。 ゴズマは目に入った砂を取ることに専念し、立ち止まった。 足音が遠くなる。 土を涙で洗い流し、何とか視力は戻った。 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!」 咆哮を上げゴズマは二匹の逃げまわる獲物に死を知らしめる 追う。 強靭で俊敏な脚力を持つゴズマは、瞬く間に羊司との距離を詰めていく。 「っつ、マジで速いぞ、あいつ!」 羊司は背中から感じたことの無い恐怖を受け、冷や汗を掻く。 日本では日常でほとんど馴染みの無い殺人を、この世界の住人は当たり前のように行う。 付き纏う死の影に脅え、羊司の目から涙が溢れる。 「しっ、死にたくねぇ!」 涙で視界が滲み、慌てて腕で拭う。 「痛っ」 擦り傷だらけになった腕が涙で染みる。 なぜこんな事になってしまったのだろう。 羊司は戻れるなら昨日に戻りたいと思った。 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!」 それ程離れていない場所でゴズマの叫喚が震える体を貫く。 「畜生っ、生きてやる! 絶対に!」 羊司は疲労でふらつく足に力をこめた。 ゴズマが羊司の姿を視覚に捕らえる。 「追いかけっこは終わりだぜ、糞ガキ!」 ゴズマの速度が上がる。 森を踏み荒らす音が聞こえ羊司が振り向くと、すぐ傍にゴズマの姿が見えた。 「やばい!」 速度を上げようとするが羊司の身体が悲鳴を上げるだけで、うまく走ることができない。 羊司の体はとっくに限界を超えていた。 意識は急げ、逃げろと伝えるが、身体が全く追いついてこない。 羊司は先程と同じ様に牽制に砂を浴びせようとするが、ゴズマは両腕で顔を守り、大して効果を得られない。 「ヨウジさん、こっちです!」 万事休すかと思ったその時、コリンの声が聞こえた。 「コリン!」 「そこにいたか、小娘!」 コリンは樹陰から顔を出し、羊司に手を振った。 羊司は頷き、コリンに向かって気力を振り絞り駆ける。 「おおおおぉおおぉぉぉ!」 「ガキイイイィイィィィ!」 ゴズマの姿が羊司の背後に迫る。 「コリンッ!」 「ヨウジさんっ!」 羊司は体勢を低くし、コリンの元へ飛び込む様に駆け込んだ。 身体を屈め、動かないでいるコリンの手を取る。 引っ張られるコリンだが、速度の乗っていないそれは致命的な失敗だった。 コリンのもつれた足がバランスを崩す。 姿勢が崩れ、コリンと羊司は前にうつ伏せに倒れこんだ。 その逸機を見逃すゴズマではない。 二人は振り返り、もうゴズマから逃げ切れないことを悟った。 「終わりだ、糞ガキ!」 ゴズマは速度を落とさず抜剣し、羊司を刺し殺そうと腰だめに構えた。 羊司は考えた。 力では歯が立たない。 逃げ切れるとは思わない。 奴隷になれば生き残れるが、コリンの命は奪われてしまう。 なら二人一緒に生き残るにはどうすれば良いか? 必死で知恵を振り絞る。 19年の人生の中で、最も頭をめぐらせた。 そして思いついた決死の策。 一人が罠をはり、もう一人が囮になる無謀な策とは言えない様な愚策。 出会ったのが数時間前で、まともに話を出来たのがたった一時間前だ。 信頼関係と言えるものも碌にできておらず、片方が裏切れば簡単に瓦解する策だ。 しかし、羊司は信じた。 「げこぉっ!?」 それしか方法は無いからと言う理由からではなく、怖がりで泣き虫な少女だが自分を救ってくれた優しさを信じた。 「げぇーーっ、ご、ごふっ、げぇーっ、げほっげほっげほっ……」 突然ゴズマの身体が上半身だけ急停止し、下半身を前方に放り出した。 剣を取り落とし仰向けになって必死で首を抑えもがく。 「ざまあみろ……駄犬」 羊司とコリンはゴズマの苦悶の表情を見ながら、ゆっくりと痛みと疲労と恐怖に震える身体を起こした。 話は少し遡る。 「コリン……今から俺の言うことをちゃんと聞いてくれ……」 コリンを庇い背中に隠した時、羊司は小さく呟いた。 「は、はい……」 「俺の後ろのズボンのポケットの中に、さっき切れた弦と予備の弦が入ってる。 それを取ってくれ」 コリンは羊司のズボンから、丸めて収められていた弦を取り出す。 「ありました」 「それを持ってこの森を真っ直ぐ走れ」 「えっ?」 羊司の言葉に戸惑う。 このヒトを置いて自分だけ逃げてよいのかと思う。 しかし、 「できません……」 結局、ゴズマの足の速さに逃げ切れるはずと諦念し、また羊司を置き去りにするという良心の呵責に耐え切れず、コリンは俯いてしまった。 ゴズマが何か言っているようだが、コリンの耳には届かない。 「コリン、君のする事は逃げる事じゃない」 コリンの心情を察し、羊司は優しく言い聞かせる。 「君は走って、この弦で森に罠を張るんだ。 出来るだけ狭い樹木に精一杯足を伸ばして弦を結ぶんだ。 俺が、怒り狂っているあいつをおびき寄せる。 出来るな?」 コリンは羊司の意図をよく理解した。 「でも……絶対無理です」 それでもコリンは頭を左右に振り、否定する。 ゴズマのあの足の速さにヒトである羊司が逃げ切れるわけが無い。 「コリン、一度でいいから俺を信じて欲しい」 その言葉にコリンは顔を上げる。 表情は窺えないが真剣な表情をしているのはわかった。 「頼む。 絶対に君のところまで、どんな手を使ってでも逃げ切って見せるから」 その力強い言葉に、コリンは決意した。 「わかりました……信じます」 コリンは一分一秒でも早く罠を仕掛けることで羊司を信じる証とする。 羊司の信頼に報いるためにも。 「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」 「コリンは悪くない」 行けっ、と羊司は呟いた。 コリンは頷き、恐れを勇気でねじ伏せ走る。 「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺は――」 全部聞けないのが少し残念だった。 「どうだ、ヘヴィゲージの弦の味は?」 「ぎ、ざま……」 苦しみ悶えているゴズマに羊司は嘲りを含め言い放つ。 「お前は激昂しやすい性格だったからな。 簡単に挑発にのってくれた」 「何、を、しやがっ、た……」 「ギターの弦をお前の身長に合わせて張っただけだ。 こんな森の中じゃ視界も悪いし、早々ばれない。 しかも樹木と樹木の間が狭いし、枝があるから首を突き出す格好になる突きしかできねぇだろ。 この辺りはコリンが機転を利かせてくれたおかげだな。 あとはお前が勝手に幹に張った弦に全力で突っ込んで自滅したんだ」 「舐めた、真似……じやがって……」 ゴズマは血走った目で羊司を見、這いながら落ちた剣に手を伸ばす。 しかし、その手が長剣に届くことは無かった。 「俺が引導を下してやる」 長剣を拾い、羊司はゴズマに死刑宣告をする。 後ろでコリンが息を呑む。 手を伸ばし羊司の服を指ではさみ、これから行われるであろう人殺しを止めようとする。 「ぎざま……」 「俺はコリンの為、そして自分の為にお前を殺す。 これから何度も誰かに襲われるだろうけど、その度にそいつらを殺す」 「一生、やってな……」 大きく咳き込み、ゴズマは血を吐いた。 呼吸器系の損傷が相当酷いようだ。 「ヨウジさん……」 「コリン、手を離してくれ」 止められないとわかったのだろう。 コリンは伸ばした手を離した。 そして俯き、ゴズマから顔を背ける。 「コリン、しっかり覚えておいてくれ。 俺はこれからも人を殺すって事を」 それだけ言うと、羊司は重い長剣を振り上げ、ゴズマの首を目掛け振り下ろした。 「……行こう、コリン」 「……はい」 ゴズマの遺体をその場に放置し、二人は歩き出した。 コリンはすぐに立ち止まり振り返ってゴズマを見る。 悲しそうな表情で死んだゴズマを眺め、何かを振り切るように目を背け、先を行く羊司を追いかける。 そして二度と振り返らなかった。 置き去りにしたギターや籠を取り、薄暗い森を二人は歩く。 先ほど初めて人殺しをしたのが心に重くのしかかっているのか、二人に会話は無い。 普段あまり饒舌ではないコリンも、何かを言わなければならないと口を開こうとするが、なぜか言葉が出てこない。 コリンが沈黙を気まずく思いながら羊司の背中を眺めていると、突然羊司がコリンの法を向き、口を開いた。 「コリン」 「は、はい。 なんでしょうか!」 羊司の真剣な表情に、コリンは気押されたかのように身を硬くする。 「コリン、その……さっきも言ったかと思うんだけど」 さっき? さっきとは何の事だろう、と思い始めたところで、心当たりがあったのかコリンの頬が赤く染まる。 「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」 「コリンは悪くない」 「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺はコリンのことが――」 コリンは耳まで顔を赤くしながら、羊司の言葉を待つ。 「ええとだな、その、きのこは捨てた方がいいと思うんだ」 「はい?」 コリンは耳を疑った。 「いやさ、なんか見るからに怪しさ全開のきのこ取ってただろ? あれって幾らなんでも食べると身体に悪そうって言うか……」 羊司は如何にも言いにくそうに話し、コリンの籠に手を伸ばす。 突然伸ばされた手にコリンは身をすくめる。 そんなコリンを早く俺に慣れて欲しいと思いながら羊司は、さきほどコリンが拾った赤いいぼ付ききのこを手に取る。 コリンは恐る恐る目を開き、羊司の手を見た。 「えーと、ヨウジさん」 「他の食材ならまあ何とか料理できなくも無いけど、これはちと無理――」 「食べませんよ。 これは」 羊司はぴたりと静止する。 「これは食用じゃなくて薬用です。 疲労回復や滋養強壮など様々な効用がある北のこの地方にしか生えない珍しいきのこなんです」 「あ、そうなの……」 それを聞いて羊司は胸をなでおろす。 「心配、して下さったんですね。 ありがとうございます、ヨウジさん」 コリンは微笑み、頭を下げる。 一瞬期待してしまった事とは違うが、羊司は自分を気遣ってくれたことに素直に感謝を述べる。 「ああ、いや、そんな、頭下げないでくれ。 なんだか照れる」 羊司も先程のコリンと同じように顔を耳まで染め上げる。 顔を上げたコリンの顔を直視できずに必死で手を振り、別の話題を探す。 「あ、なんか変な動物がいるぞ! 見てみろって、コリン」 焦る羊司の指差した方角にコリンが目を向けると、全身が薄い茶色に覆われ顔面だけ白い動物がいた。 「あ、クト」 羊司が何かを言う前に、コリンはクトと呼ばれたラクダの様な動物に駆け寄る。 クトは嬉しそうに首をコリンに擦り付け親愛の情を示す。 「くすぐったいよ、クト」 「随分馴れているんだな」 危険はないと判断したのか羊司はクトに近づく。 コリンは微笑みながら頷く。 「ずっと一緒に旅してたの。 クトはリャマっていう動物の種類で、荷物の運搬とか随分お世話になってるんです」 コリンはクトの頭を撫でながら答える。 「へぇ、これからよろしくな。クト」 羊司が頭を撫でようとすると、その手から逃げる様にすぃっと顔をそらした。 「あ、こら」 「ふふっ、嫌われちゃいましたね」 人好きな性格だからすぐ仲良くなれますよとコリンは笑いながら、クトの首にかかった手綱をとる。 歩き出したコリンに逆らわずクトは歩き出した。 「こっちです。 羊司さん」 「あぁ、わかった」 一人じゃなかったんだなと考えながら羊司は、コリンとクトの良好な関係に笑みを浮かべた。 「ここです。 羊司さん」 案内されたテントは思っていたよりも大きかった。 モンゴルのゲルを一回り小さくした円形状のテントは、骨盤がしっかりしているのか、ちょっとやそっとでは倒れる心配は無さそうだ。 周囲には炊き出しに使った鍋や、簡単な岩を並べたコンロがあった。 「初めてヒトを入れるんですけど、ドキドキしますね」 コリンが照れくさそうに言った。 羊司は異性の部屋に入った事が数回あったが、それほど興奮したりはしなかった。 しかし今は心臓の音がコリンに伝わるのではないかと思うほど緊張していた。 コリンは蚊帳を開き先に入り、羊司を中へと促す。 「汚いところですけど、笑わないで下さいね?」 「あはは……」 羊司が苦笑しながらテントに足を踏み入れようとし、ふとその場で動きを止める。 首をかしげコリンは羊司の動きを観察する 「ヨウジさん?」 「あ、えーと……これから俺が何時までかかるかわからないけど、元の世界に帰るまでお世話になるだろ? その度にお客さんとして扱われるのはどうかなーと思うわけなんだ。 あー、だから、つまり……その――」 コリンの目を見れないのか、しきりに目を泳がせる。 「ええとだな……これからよろしく、ただいま……かな?」 「はい……私こそ、よろしくお願いします。 お帰りなさい、ヨウジさん」 コリンと羊司はお互い微笑みあう。 暗く寒い森の中の小さなテント、異世界から迷い込んだヒトの男は孤独で泣き虫なヒツジの少女と共に暮らし始めた。 男は自分の世界に帰るために、少女は未だ自分が何をすればいいのかわからず旅を続ける。 これは歴史に刻まれるヒトと人間の寄り添いあった生涯を描いた物語である。 「コリン、ギター弾いてやろっか?」 「わぁ、聞きたいです。 ヨウジさん」 「よし、じゃあ外にでよう」 「はいっ!」 二人の未来に幸多からん事を。
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『ゆっくり退化していってね!4』 36KB 観察 考証 番い 野良ゆ 赤ゆ 都会 現代 独自設定 退化 段ボールの巣の中で、まりさとれいむの子どもたちは親の帰りを待っていた。 「おとうしゃん……ゆっくちちてにゃいではやくかえってきてにぇ」 「ゆぅ……いっぱい、ごはんしゃんとってきてほちいにぇ」 「おかあしゃんがいないとさびちいのじぇ………ゆっくちできにゃいのじぇ」 「おそとであそびちゃいにぇ………。みんにゃでたのちくゆっくちちたいにぇ………」 お互いの薄汚れた頬をくっつけ、赤ゆっくりたちは悲しそうにタオルの中で丸くなる。 ほかに何もすることがない。 外は危険な光で満ちあふれ、とても遊ぶ場所にはならない。 ならば巣でゆっくりできるかというと、そうではない。 タオルは生ゴミの汁を吸い、すえた悪臭を放っている。 巣のすぐ外に捨てられたうんうんの悪臭が、ここまで漂ってくる。 先日の雨で、段ボールの屋根と床はじっとりと濡れ、不快な湿り気を帯びている。 とてもゆっくりと親の帰りを待てる状況ではない。 「おねえしゃん……ゆっくちちたいよにぇ………」 次女まりさが長女れいむにそう言うと、れいむも応じた。 「ゆぅん…まりちゃも?れいみゅ……もうじゅっとじゅっと……ゆっくちちてにゃいよ…………」 長女れいむの言うことは本当だった。 赤ゆっくりたちは、自分たちが最後に心の底からゆっくりできたのがいつなのか思い出せない。 過去を振り返っても、毒の草とまずいゴミ、そして恐ろしい日光ばかり思い出してしまう。 長女れいむが同意したので、次女まりさはさらに愚痴る。 「いちゅもごはんしゃんは……ごみしゃんなのじぇ。くちゃくてきたなくて……まりしゃ、あんこしゃんをはいちゃったのじぇ…………」 四女の中で一番食いしん坊の次女まりさにとって、食事が生ゴミというのが最もゆっくりできない。 以前はおなかいっぱい雑草と虫をむーしゃむーしゃし、腹が膨れ上がるまで食べたものだ。 食事のメニューが変わっても、まりさの食い意地は変わらない。 臭くて汚い生ゴミでもなるべく多く食べようとし、結果として次女まりさは餡子を吐いた。 「おそとはきょわいよぉ………。おひしゃまにあたるとじゅーってほっぺがやけて、しゅごくいちゃくてあちゅいよぉ……」 長女れいむの不満は外に出られないことだった。 今まで、長女れいむは子どもたちのリーダーだった。 お外を探検しに行くときは、れいむは先頭に立って妹たちを導いた。 河川敷の草むらを四匹で冒険するときは、自分が姉であることをとても誇りにしていた。 だが、今は外に出るのは乞食に行くときくらいであり、ほとんどの時間は巣の中でじっとしていなければならない。 あの恐ろしい日光を浴びたときの激痛は忘れがたい。 「ゆっくちぃ……ゆっくちちたいよぉ………おとうしゃんとおかあしゃんと、おねえしゃんたちといっちょにゆっくちちたいよぉ………」 次女れいむも、今の境遇に嘆く二匹の輪に加わって涙を流し始めた。 しかし、この湿っぽいなれ合いに加わらないものがいた。 長女まりさである。 「ゆぅん!そんにゃことにゃいよ!まりしゃたち、いっぱいゆっくちできてりゅよ!」 「おねえしゃん……?」 「おとうしゃんはおいちいびすけっとしゃんをにんげんしゃんからもらってきてくれたよ!おいちくてしゅごくゆっくちできたよ!」 長女まりさは負の連鎖に陥っている妹と姉の思考を一喝し、楽しいことを思い出させた。 親まりさの持ってきてくれたビスケット。 カリカリとした歯ごたえと、ほんのりと舌に感じる甘さ。 生ゴミとはかけはなれた、ゆっくりしたおいしさだった。 「ゆぅ……」 考え込む三匹。 さらに長女まりさは楽しいことを思いつく。 「おかあしゃんはいちゅもやさしいよ!まりしゃたちにしゅーりしゅーりして、あんこしゃんがほんわかしゅるよ!ぺーりょぺーりょしてくれりゅよ!」 「ゆっ………」 「おそとであそべにゃくても、おうちでみんなゆっくちいっしょだよ!たのちいよにぇ!ゆっくちできてりゅよにぇ!」 長女まりさは、苦境にあっても明るく振る舞おうとした。 それは報われる。 「ゆ……そうなのじぇ!まりちゃたち、しゅごくゆっくちできてたのじぇ!」 まずは言い出しっぺの次女まりさが、涙を拭って笑顔になった。 自分が言い出したくせに、いい気なものである。 「ゆ~ん!そうだにぇ!れいみゅはゆっくちちたゆっくちだったにぇ!」 続いて長女れいむが泣きやんだ。 やや固いが笑顔になって妹たちにすりすりする。 「ゆっくち!ゆ~ん!れいみゅゆっくちちてきたよ!ゆっくち~!」 最後に次女れいむの顔に笑顔が戻った。 全員が明るい顔になれば、辛い状況でもゆっくりできる。 今お互いをゆっくりさせてあげられることは、すりすりすることだけだ。 せめて、それだけでもしてあげたい。 「しゅーりしゅーりだよ!しゅーりしゅーりでゆっくちできりゅよ!」 「しゅーりしゅーり!」 「ゆっくち~♪」 「ゆっくちなのじぇ~♪」 四匹の赤ゆっくりは巣の中で、楽しそうにお歌を歌いながらすーりすーりを繰り返していた。 いきなり巣の外で、ガサッと音がする。 「ゆぴっ!」 「ゆぴゃっ!」 突然の大きな音に、次女二匹は悲鳴を上げて硬直する。 れいむはもみあげを、まりさはお下げを逆立てていることから、相当びっくりしたらしい。 「にゃ……にゃんな…の?だれか……いりゅの?」 こわごわ長女まりさが外をうかがう。 長女れいむは小刻みに震えながら、空気の匂いをかぐ。 両親の餡子があったかくなるような匂いではない。 「おとうしゃん……じゃ…にゃいよ………にゃんだか、へんなにおいがしゅるよ………」 「きょわいよぉぉぉぉ…………」 次女れいむが長女れいむの陰に隠れる。 のっそりと、匂いの主が姿を現した。 ボサボサの不潔な体毛と、毛のない尾。 小動物でありながら、全身から獰猛な気配を放っている。 じろりと、その動物は巣で縮こまる赤ゆっくりたちをにらみつけた。 まだ若いドブネズミだ。 「ね……ねずみしゃんだあああああああああああ!」 「ゆんやああああああああ!」 「ねずみしゃんはゆっくちちてにゃいよおおおお!」 「れいみゅきょわいいいい!」 一斉に赤ゆっくりたちは、下半身から細く絞りこまれたしーしーを噴射して飛び上がった。 しーしーは止まらない。 あまりの恐怖に、赤ゆっくりたちの下半身は意に添わず失禁を続ける。 自分たちがしーしーを垂れ流していることさえも気づかず、赤ゆっくりたちは絶叫するだけだ。 ドブネズミは何かをくわえていた。 新しい獲物を見つけたからか、それを口から離す。 地面に落ちたそれは、まだ震えていた。 「ゆー………ゆー…………ゆっ…………ゆぁ…………ゆーぅ…………」 赤ゆっくりたちは、恐怖によって覚醒した意識でそれが何かをはっきりと理解した。 うめきながらこちらに這ってこようとしている。 片方の目玉はない。 もみあげは両方とも引きちぎられ、餡子が漏れている。 口からは自分の痛みと、助けてほしいという願いが一緒にうめき声としてあらわれている。 それは体を半分食べられながら、まだ生きていた赤れいむだった。 「「「「ゆっんびゃああああああああああああああああああああっっっ」」」」 生まれて始めてみるスプラッター映像に、赤ゆっくりたちは声が枯れるほど叫んだ。 驚異的に運がいいことに、四匹はドブネズミのランチになる運命は免れた。 「おぢびぢゃあああああああああああん!」 「ねずみさんはがえれええええええええ!」 まさにそのとき、カラスやハトの襲撃をかいくぐって両親が帰ってきたのだ。 まりさとれいむは最後の力を振り絞って、愛しい子どもたちを狙うドブネズミに飛びかかる。 幸運だったのは、ドブネズミはすでに赤れいむの家族を惨殺した後だったので、ほぼ満腹だったことだ。 もしも本気になれば、まりさの家族はあっさりと餡子と饅頭皮の物体に変わっていたことだろう。 ドブネズミはわめきながら突進するれいむとまりさを一瞥すると、素早く赤ゆっくりをくわえて姿を消した。 「おとうしゃああああああん!」 「おかあしゃああああああん!」 「まりちゃきょわかったのじぇええええええええええ!」 「ちーちーもらちちゃったよおおおおおおおおおおお!」 危険が過ぎ去ったことを理解し、赤ちゃんゆっくりたちは泣きながら両親に飛び込む。 生まれて始めて、「永遠にゆっくりするかもしれない」と思った。 死ぬかもしれない状況に直面することが、これほど恐いとは思わなかった。 「だいじょうぶだよ!だいじょうぶだからね!もうだいじょうぶだよ!ゆっくりできるよ!」 「ぺーろぺーろ!ぺーろぺーろ!ほら、おかあさんだよ!もうみんなあんしんだよ!」 まりさとれいむは顔中を口にしてわんわん泣く子どもたちを、何とかして落ち着かせようと努力する。 まりさは何度も何度も、「もう大丈夫だよ」と言い聞かせる。 れいむは一匹ずつ、心を込めると同時に急いでぺろぺろしてあげる。 「ゆっくちしちゃい!ゆっくちしちゃい!ゆっくりしちゃいしちゃいしちゃいしちゃいいいいいいいいいい!」 「ゆっくちできにゃいよおおおおおおおおおおおお!れいみゅゆっくちできにゃいいいいいいいいいいいい!」 「きょわいよおお!れいみゅしゅごくきょわいよお!きょわい!きょわい!きょわいきょわいいいいいいい!」 「ゆっくちできにゃい!ゆっくちちたいのにできにゃい!にゃんで!にゃんで!にゃんでにゃんでええええ!」 今までは、ちょっと痛い思いをしたりして泣いても、まりさが優しく呼びかけ、れいむがぺろぺろしてあげればすぐに泣きやんだ。 笑顔の絶えない一家だった。 けれども、今までとは桁が違う恐怖を味わった子どもたちは泣くのをやめられない。 引きつけを起こしたのか、四匹は巣で転げ回り、タオルに噛みつき、両親の顔に自分の顔をこすりつけて泣きわめく。 しーしーだけでなく、下痢気味のうんうんまでもがまき散らされる。 二匹は子どもたちの味わった恐怖がどれほどひどかったのかを理解し、心が痛んだ。 自分たちの味わった地獄と同じくらい恐ろしい思いを、おちびちゃんたちは味わったのだ。 「だいじょうぶだよ…。みんなだいじょうぶ……。まりさのだいじなおちびちゃんだよ……。だいすきだよ…………。だからゆっくりしようね…………」 「おかあさんがおちびちゃんたちをどんなことがあってもまもるからね……ゆっくりしていいよ……いっぱいゆっくりしようね…………」 まりさとれいむは届かないと分かっていながら、懸命に赤ちゃんゆっくりたちに呼びかける。 すりすりしても、ぺろぺろしても子どもたちは涙が止まらない。 我が子が苦しむのを見るのは、まりさにとって非常に辛いものだった。 家族が壊れていく。 あらゆるものからまりさたちは邪険にされ、ゆっくりできなくなっていく。 (まりさたちがなにをしたの?まりさたちがどんなわるいことをしたの?まりさたちはゆっくりしたいだけだよ。なのにどうしてみんないじわるなの?) まりさは誰かに問いかけた。 問いかけずにはいられなかった。 こんなことが許されるはずはない。ゆっくりできなくなるなんてことがあるあずがない。 そう思っていても、まりさの目の前の現実は何も変わることはなかった。 *** ゆっくりたちにとって嵐のような二週間が過ぎた。 ゆっくりたちの歴史の中で、これほど悲惨な十四日間はなかったのではないだろうか。 今まで食べていた草や昆虫はもう食べられない。 日光を浴びただけで体が焼ける。 見逃していてくれたカラスやネズミやネコは、恐ろしい天敵になった。 人間たちもこの変化に驚いている。 さすがに、ゆっくりの集団を襲う大量のカラスはインパクトがありすぎた。 市民からも「そろそろ我が街でもゆっくりの駆除をするべきではないか」という意見が寄せられてきたらしい。 今まで飼いゆっくりとそれなりに共存できていた野良だったが、ここに来て駆除という選択肢が姿を現し始めた。 あのカラスが飼いゆっくりを襲ったら。 もし人間の赤ん坊や幼児が巻き込まれたら。 次第に人々の目は、ゆっくりを危険なものとして見始めた。 俺はあのインタビューの後から、なぜかA主任の助手のようなことをしている。 「報酬あるから、ちょっと手伝って」とメールが来たのに応じて、カラスに食われそうになっていた一匹のれいむを研究所に届けたのが始まりだ。 A主任は、なぜゆっくりが突然鳥たちに襲われるようになったのか知りたかったようだ。 俺が届けたその日に、あっという間にれいむは解剖された。 『予想通りの結果だ。ドスまりさのゆっくりオーラがゆっくりではない人間に効果があるように、中枢餡が放つ超音波は他の生物に影響を与えていた。 これまで市販のネコ除けのようにゆっくりを動物から遠ざけていた超音波は、今となっては逆転している。 ゆっくりがいることを動物に知らせ、それを捕食させるようにし向けているかのようだ。寄生虫でもいるのか? カタツムリを中間宿主とするレウコクロリディウムについて知ってるかな。でも餡子にそんなものはいない。ウイルス?違う?何だこれは』 夜になってA主任から興奮気味のメールが届いたことからして間違いないだろう。 気になってそのレウコクロリディウムとかいうのをネットで調べてみたら、速効でグロ映像にぶち当たって鬱になったのは言うまでもない。 カタツムリの目玉が気持ち悪いイモムシみたいになってにょきにょき動いている映像は、どう見てもホラー映画のモンスターだ。 なんでも、この寄生虫は鳥の体内に移動するためにカタツムリを乗っ取り、鳥に食べられやすい場所に移動したり触角をイモムシみたいにするらしい。 生態からしてホラー映画に出ておかしくない。 A主任によると、ゆっくりはもともと中枢餡から人間に聞こえない超音波を出して、他の動物を遠ざけているらしい。 だから、あんなにか弱い饅頭生物でも野生で生きていけたのか。 でも、今カラスに襲われているゆっくりはその機能を失っている。 失ったどころか、逆に襲って下さいと言わんばかりに自分たちの存在を鳥たちに教えているのだ。 もしかしたら、自分たちを美味しい餌だとアピールまでしているかもしれない。 めちゃくちゃな話だ。 どの生物が、自分から殺されるように進化するだろうか。 逆に退化としても、もともと中枢餡は他の動物に襲われやすい信号を発していたが、進化の末に動物を遠ざける機能になっていたとでも言うのだろうか。 いくらゆっくりが思い込みの生物だとしてもおかしすぎる。 さらにA主任は俺に頼み事をしてきた。 今度は「この街のゆっくりの数を調べて欲しい」というものだった。 言われるがままに、俺はその日から一日中街を回ってゆっくりの数を研究員たちと一緒に数え続けた。 いったいA主任はどういうつもりなんだろうか。 データを報告してから、しばらくの間A主任から短いメールが断続して届けられた。 『この街のゆっくりの個体群密度は非常に高い。高すぎではないが、後一歩で高すぎる状態になる』 『野生のゆっくりが駆除される原因→数が増えすぎて人里の野菜を襲うから→結果的に間引きになる』 『ゆっくりに遺伝餡があることは知ってるよね。まだ全部が解明されていないけど』 『ゆっくりを生物として見ないで細胞として見ろというのか?』 『野生のゆっくりは行ったこともない加工場を恐れる。これはゆっくりが深層意識を共有しているという説がある』 『違う違う。中枢餡からの超音波で会話しているんだよ。「かこうじょはこわいよおお」という断末魔の悲鳴を聞いているんだ』 『どっちでもいいや。とにかく、これでこの街の野良ゆっくりが対象になったことは説明できる』 『飼いゆっくりと野良ゆっくりの間の溝は、やがて通常種と希少種の間の溝に匹敵する深さになるに違いない』 『出産制限をしない群れは指数関数的に子孫を増やしてあっという間に飽和状態になる』 『ゆっくりは個体群密度の上昇に危機感を抱かない。むしろ増えれば増えるほどゆっくりできると思いこんでいる。餌が枯渇するその瞬間まで』 『ガイアがゆっくりに囁いている。いや違う。ガイアじゃない』 相当A主任は研究に没頭しているようだ。 俺のケータイをツイッター代わりにしているんじゃないのか、この人? 日を追うに従ってA主任のメールは意味不明になっていく。 最後のガイアなんて、ゆっくりと何の関係もないと思うんだが。 『2001年7月12日付の○○新聞を見た?』 こんなまともなメールも届いた。 言われるがまま、俺は図書館で資料を漁ってみる。 そこにはこんな見出しと記事が掲載されていた。 「F市のN川にゆっくりが大量投棄?」 読み進めてみると、県境に位置するF市を流れるN川河畔に、前日から大量のゆっくりの飾りが流れ着いていると書いてある。 F市はN川の上流に位置する隣県のM市が、ゆっくり駆除の名目で川に投棄したのだとして、しっかり抗議すると息巻いていた。 M市という名前と、この日付には見覚えがあった。 たしかM市は、ゆっくりんピースが「全国初の完全ゆっくり保護市」を一方的に標榜して大々的な野良ゆっくりの保護を行った市のはずだ。 市民の無関心をいいことに、善人気取りのゆっくりんピースは野良ゆっくりに餌付けをし、段ボールハウスを作り、公園をゆっくりのコロニーに変えた。 家の花壇を食い荒らしたゆっくりを殺しただけで、その家に抗議のビラが届けられたという話も聞いたことがある。 さぞかし、甘やかされた野良ゆっくりたちは子どもを次々に産んで増殖したことだろう。 この街を上回る量のゆっくりが道路を闊歩する様子を、俺は想像した。 何とドスまりささえ、市のど真ん中で誕生していた。 市のゆっくりすべてを群れのメンバーとしたドスと、ゆっくりんピースのメンバーが嬉しそうに写っている写真はあちこちで公表されていた。 M市がゆっくりを駆除するはずがない。あそこの市長はゆっくりんピースから支援されていたはずだ。 騒動の結末を知りたくて俺はさらに調べたが、その結果に唖然とした。 M市そしてゆっくりんピースからの、F市の抗議に対する回答はなされていなかった。 M市のゆっくりんピース支部長が、児童買春の疑いで逮捕された記事が代わりに載っていただけだ。 そこから先はネットの出番だ。 データを漁ると、次々と流言飛語が出てくる。 「ゆっくりんピースの支部が置かれていたビルは暴力団の所有していた物件だった」 「支部長は暴力団から寄付金を受け取っていた」 「ゆっくりんピースの幹部たちは寄付金を流用して風俗に通っていた」 「加工場の陰謀でドスは暗殺された」 「児童買春じゃないよ!ゆうかにゃんだからノープロブレムだよ!どぼじでわがらにゃいのおおおおお!」 口さがないものたちは針小棒大に、どうでもいいことを吹聴する。 ゆっくりんピースは都合が悪くなったため、口を閉じてM市から逃げるように撤退した。 M市の市長本人はゆっくりに関心がなかったらしく、F市の抗議に何かした記録はない。 そのため、F市に流れ着いた大量のゆっくりの飾りが何だったのかは分からずじまいだった。 『君は齧歯類に死生観があると思うかい?ネズミが自分で死のうとするわけないじゃないか!』 完全に俺のケータイをツイッターと勘違いしているメールを最後に、A主任からの連絡は途絶えた。 俺は、A主任が何を考えているのか完璧に分からなくなった。 俺はゆっくりを生物学的にどうこう言える立場じゃないし、A主任が正しくても間違っていても別にいいと思ってる。 日陰で縮こまる、やせ細ったゆっくりたちを俺は録画していく。 怯えきった顔ばかりだ。 排気ガスとゴミで汚れて萎びかけた饅頭となったゆっくりたちは、一匹残らずゆっくりしていない。 生きるためのあらゆる手段が、退化によってことごとくふさがれたゆっくりたちだ。 「おにいさん……ごはんをください…………れいむたちに……ごはんをめぐんでください…………」 「まりさは…なんでもたべます…………。きたないなまごみを………まりさにたべさせてください………」 ずりずりと這って、れいむとまりさの番が俺に近づいてきた。 俺は日なたにいるから、一定の距離以上は近づけない。 乾燥して潤いのなくなった白玉の目が、俺を最後の希望として見つめている。 衰弱しきったゆっくりたち。 もうじき死ぬだろう。 「まってください……まってください………おねがいです………おねがいです…………」 「ゆっくりさせてください………ほんのちょっとでいいんです……ゆっくりしたいんです………」 俺はその顔をアップで撮ってから、脇をすり抜けて歩き出した。 蚊のような哀願が後ろから聞こえてきたが、どうせすぐに死ぬ。 助けるだけ無駄だし、飢えた野良をいちいち助けていたら俺は三日以内に破産する自信がある。 ゆっくりにこだわっている限り、野良ゆっくりは幸せになることはないだろう。 だが、野良ゆっくりから最大の幸福であるゆっくりすることを捨てさせることは不可能だ。 「じゃあ、野良ゆっくりは絶対幸せになれないじゃないか」 俺は自分の至った結論にぞっとした。 ゆっくりに生まれなくて本当によかった。 もし死んで、来世でゆっくりに生まれ変わったらと思うとぞっとする。 こんな歩く死亡フラグに前世の記憶を残して生まれたら、その場で頭かち割って死んでやる。 「おねがいじまず!おねがいじまず!ありずのがわいいおぢびぢゃんをだれががっでぐだざい!どっでもどがいはでず!ゆっぐりじでまず!」 貸店舗の前で、一匹の野良ありすが顔を涙とよだれでぐしゃぐしゃにして通行人に訴えている。 きっと、赤ありすか子ありすが度重なる心労と飢餓で死にかけていることだろう。 せめて子どもだけでも助けてほしいと、ありすは人間に懇願している。 「おねえざん!ゆっぐりじだおぢびぢゃんをみでぐだざい!ぎっどぎにいりまず!ずごぐゆっぐりでず!」 ありすは一人のOLの前に立ちはだかってわめいた。 彼女は無視して通り過ぎる。 熱意は伝わるのだが、あまりにもありすの懇願は一方的だ。 ただ「おぢびぢゃんをがっでぐだざぁい!」と叫ぶだけなら、餌をたかっているのと大差なく扱われて当然である。 「おにいざんだぢ!おねがいでず!ありずのいっじょうのおねがいでず!ありずのおぢびじゃんをもぢがえっでぐだざい!ごのどおりでず!」 ありすはあきらめなかった。 今度はちょっとガラの悪そうな若者三人組に土下座する。 泣きながら顔をアスファルトにぶつける姿を目にして、若者たちはげらげら笑ってありすをからかった。 「おいおいおいおい!何言ってんだよゆっくりの癖によお」 「一生のお願いです、だってよ。どーせ毎日そんなこと言ってんだろ?あぁ?」 「ぢがいまず!ぢがいまず!ぢがいまずうううううううう!いっじょうのおねがいでず!ありずのいっじょうのおねがいなんでずううううう!」 「ハイハイ。お前が何回土下座したって無駄なの。興味ねーから」 口は悪いが、若者たちの言っていることには一理ある。 ゆっくりが「いっしょうのおねがいです」と言ってきたところで信じられるだろうか。 昨日のことさえ忘れるゆっくりの言うことは当てにならない。 「お前の餓鬼なんか飼って俺らに得あんの?ねーだろ常識的に考えて」 「ありまず!ありまず!いっばいありまず!」 「だってよ。おいF、飼ってやれよぉ」 もしかしたら飼ってくれるかも、とありすの目が輝く。 F、と呼ばれた若者は慌てて否定した。 「はぁ?冗談きついって。なんで俺が飼わなきゃなんねーわけ?」 「おぢびぢゃんがいっじょだどゆっぐりでぎまず!どっでもどがいはでず!じあわぜーになりまず!だがらがっでぐだざいいいいいいい!」 急に、それまで意地悪そうに笑っていたFの顔が不機嫌なものになった。 「馬鹿抜かしてんじゃねーよ。そんなにゆっくりできて都会派で幸せだったらさあ、何で母親のお前がゆっくりしてなくて都会派じゃなくて不幸せなんだよ」 「ゆ?ゆゆう?ゆぶぶぶううううううううう!?」 ありすは無様な声を上げてぴたりとお願いを止めた。 正論である。 子どもを飼ってゆっくりできるなら、今子どもを抱えているありすがゆっくりしているはずだ。 現実は一目瞭然である。 涙とよだれでべたべたに汚れ、血走った目とぼさぼさの金髪のありすがゆっくりしているはずがない。 「あはははははっ!Fってばすっげー頭冴えてるって。マジ天才」 「ははっ!はははっ!固まってんよこいつ。どーせ図星なんだろ」 言い返すことができず、ぶるぶる震えながら硬直するありすを、残る二人はこれでもかとあざける。 「あーあー、嫌なもん見ちまった。行こうぜ」 「ああ。俺は家族を大切にしない奴は大っ嫌いなんだよ。じゃあな」 軽蔑の視線をありすに浴びせてから、Fは先を行く二人に追いつこうと足を早める。 取り残されたありすは、もくろみがおじゃんになったことを理解して絶叫した。 「ゆがあああああ!まっでぐだざい!まっで!まっでまっでまっでえええええええええええ!」 俺はありすに近づいた。 ちょっとこのありすの子どもに興味がわいたからだ。 どうせ死にかけた赤ありすだろうが、必死な親ありすと瀕死の赤ありすという組み合わせはいい被写体になる。 都会の野良ゆっくりを象徴する姿だからだ。 「おにいざん!すでぎでどがいはなおにいざん!おにいざんはがわいいおぢびぢゃんをがっでぐれまずよね!ぐれまずよねええええ!?」 ありすは懲りずに、俺を見つけるとぼよんぼよんと跳ねてきた。 動きからして不気味なゆっくりになっている。 「とりあえず、その子どもはどこにいるんだ」 俺の言葉に、ありすは長い舌を口から振り回し、がばっと天を仰いで叫んだ。 「どがいばあああああああああああ!どがいばっ!どがいばっ!ありがどうございまず!ありずはじあわぜええええええでず!」 俺はありすの子どもを飼う気など毛頭ない。あるはずがない。 ただ、子どもを見るだけだ。 ありすにとって、子どもに興味を示してくれた人間は俺が最初のようだ。 「ごっぢでず!ごっぢにがわいいおぢびぢゃんがいまず!ゆっぐりみでがらがっでぐだざい!」 ありすが俺を案内した先は、汚い路地裏にあるポリバケツの裏だった。 不潔な野良ゆっくりのすみかとしては、テンプレのような場所だ。 近づくにつれて、何だか妙な声が聞こえてきた。 「ぎっ……………ゆびょ………………びゃびゅ………………」 「びぇー………………ゆぶ………………ぱぶぃ………………」 ゆっくりの声らしいが、気持ち悪い声で鳴くものだ。 子ゆっくりの喋り方ではないし、赤ゆっくりの舌足らずな口調とも違う。 耳にするだけで不快になってくる。 「おちびちゃんたち!ままがかえってきたわよ!それにすてきなおにいさんもいっしょよ!」 ありすは先ほどまでの濁りきった声とは裏腹に、ごく普通の親ゆっくりのような顔と声で巣に呼びかける。 反応はない。不気味なうなり声が聞こえてくるだけだ。 「もう、おちびちゃんったらてれやさんね!でもすごくとかいはよ!」 ありすの場違いな物言いの後に、ようやく子どもたちは姿を現した。 びょんびょんと体を不規則に揺らせて、二匹の赤ゆっくりがポリバケツの裏から飛び出してきた。 二匹は出てくるなり、壊れたおもちゃのようにあらぬ方向を勝手に跳ね回る。 「ゆぎぇーびべーぢょ!べべゆびゃーびぇばーびゃ!」 「びびっぢぇ!ぢぇびー!ゆばーぎゅばー!」 俺は耳を疑った。 目の前には二匹のゆっくりがいる。 ゆっくりの口から、その音は聞こえたはずだ。 だが、俺はこんなに奇怪なゆっくりの声を聞くのは初めてだった。 「おちびちゃん!そっちはあぶないわよ!ほら、ちゃんとごあいさつしましょう?おにいさん、ゆっくりしていってねっていいましょうね」 ありすは白々しいまでに、ゆっくりした母ありすの役を演じている。 ありすには分かっているに違いない。 人間がこれを見て、ゆっくりした楽しい気分になることが絶対ないことを。 知っていてなお、ありすは図々しくそ知らぬ顔をする。 「ゆげっぐぐっぐ!ぎぇぢぇゆびー!ゆっぎぢ!ゆっぎぢ!ゆぎぇー!」 「ぢぇぱ!ぢぇゆばぁ!ゆーびぢゅー!ぶびーっ!ぶゆびぃいいいいい!」 ありすの二匹の子ゆっくりは異常なゆっくりだった。 かろうじて、一匹はれいむ、一匹はありすだと分かる。 いびつで所々が変に出っ張った体をしている。 壊れたバネのように、跳躍の仕方はでたらめでまっすぐ進まない。 饅頭皮のてっぺんに、雑草のような黒と金の髪がくっついている。 ありすの方はカチューシャらしきものがついているだけだが、れいむはリボン以外に貧相なもみあげのようなものをぐるぐると振り回している。 何よりも異常なのはその顔だった。 異様に大きな両目は白目の割に黒目がありえないほど小さく、右目と左目は別々の方向を見ている。 小さな口はだらしなく開かれ、細い舌と不揃いの歯がむき出しだ。 「おにいさん!すてきなおにいさんとであえてありすはしあわせよ!とかいはなおちびちゃんたちをおねがいね!いっぱいしあわせーにしてあげてね!」 ありすは一部始終を目にしていたはずだ。 親であるからには、二匹がどんな存在か分かっているはずだ。 しかし、ありすは俺に二匹を飼うように言ってきた。 二匹の異常を無視し、俺に押しつけようとしてきた。 「どうしたの?やくそくしたでしょ?おちびちゃんをかってくれるんでしょ!おにいさんとかわいいおちびちゃんでとかいはになってね!」 ありすはさらに畳みかける。 何でもいいから、俺にこいつらを渡そうという気が手に取るように伝わってくる。 優しくてゆっくりした母親の顔をしながら、内心は何としてでもお荷物をやっかい払いしたくて仕方がないのだ。 「いつ、俺が約束したんだ」 「ゆぅう!?」 「いつ、俺がお前の子どもを飼うなんて約束したんだ。俺は、どんな子どもか見たいっていっただけだ」 俺の発言は当然だろう。 俺は「子どもを見せてくれ」と言っただけで、「飼う」なんて一言も言っていない。 勝手に俺が子どもを引き取ると思い込んでいたありすは納得しなかった。 ありすはショックを受けた様子で固まっていたが、すぐに顔中を口にして口汚く叫ぶ。 「う……うぞだああああああああ!ぞんなのうぞだ!やぐぞくじだ!やぐぞくじだあ!おぢびぢゃんをひぎどるっでやぐぞくじだああああああ! ごごまでぎだのに!おぢびぢゃんみたのに!なんでいまざらがわないっでいうんだああああああ!うぞづぎにんげんがああああああああああああ!」 ありすは今までの取り繕った母ありすの顔から、下品なゲスありすの顔に豹変した。 俺はもう冷めていた。 ばかばかしいゆっくりの芝居につきあわされた気分だ。 さっさと写真だけ撮って帰ろう。 「そこまで言うんだったらそうなんだろうな。お前の思い込みだけどな」 「はやぐ!はやぐ!はやぐじろおおおおおおおお!おぢびぢゃんをひぎどれ!がえ!がえ!がえがえがえ!がえええええええええ!」 「嫌だね。うちはペット禁止なんだ。それに、野良なんて飼ってもいいことないって決まってるんだ」 俺がなによりも嫌だったのはありすの態度だ。 浅知恵というべきか腹黒いと言うべきか、とにかく気に食わない。 「ごんなおぢびぢゃんなんがありずはぞだでられまぜん!がわりにおにいざんがぞだででぐだざい!」と言われた方がよほどよかった。 ありすも子育てに苦労しているんだ、という気持ちは理解できたからだ。 このありすがしたことは違う。 異常なゆっくりを「ゆっくりしてとかいはでしあわせーになれるおちびちゃん」と偽って、俺を連れてきたのだ。 本当は追い出したくてたまらないのに、表向きは「立派な母ありす」を演じて善良ぶるその性根の悪さ。 しかも、化けの皮がはがれればただわめくだけ。 子どもを捨てられる機会を失ったことで、ありすは逆ギレした。 「いながもののぐぞがああああああああああ!じねええええ!ありずにぎだいざぜでおいでうらぎっだぐぞじじいはじねええええええええええ!」 俺は飛びかかったありすにカウンターで蹴りを食らわせた。 「ゆぎゃびぃっ!」 ありすは壁に激突し、ごろごろと日なたに転がり出た。 たちまちありすの体が日光で焼かれる。 「あがああああああああ!いだいっ!いだい!いだいいだいいだいいいいいいいいいいい!」 向こうでじたばたともがくありすを無視し、俺はデジカメで異常なゆっくりたちを撮影した。 れいむもありすも、親が痛めつけられているのにまったく関心を払わない。 「びょびりぃぃぃぃぃいいいいい!」 いきなりれいむの方が目玉をぐるぐる回しながら、奇声とともにあにゃるからもりもりと排泄し始めた。 「びげげげっっ!ゆぐぐぶぢぇっ!」」 ありすの取った行動は異常だった。 盛り上がっていく餡子のうんうんに顔を突っ込むと、やはり奇声とともにうんうんを食べ始めたのだ。 「ゆぢぇー!ぢぇぇえええええ!ぢぇぶううううう!」 「ゆぐぢぇ!ゆぐぢぇーぢぇ!ばびぇっぢりばびっ!」 排泄を終えると、れいむも一緒になってうんうんを頬張っている。 おそらく二匹は口に入るものなら何でも食べるのだろう。 うんうんを平気で食べる様子を見れば、ゆっくりが嫌がる腐ったゴミでも食べるのが想像できる。 ありすとは裏腹に、異常な二匹は弱っているようには見えない。 そもそも、どうしてありすは二匹を捨てなかったのだろうか。 親の愛情からか?たぶん違うだろう。 きっと、ありすは子どもを捨てたり殺したりすることで「とかいはなははおや」でなくなることが嫌だったのだ。 たぶん、他のゆっくりから「ありすはゆっくりできないおちびちゃんをそだててえらいね」と言われたのだろう。 もしかしたら「おかあさんのありすはすごくとかいはだよ」とまで言われたのかもしれない。 ありすは周りの評価を失いたくなかったのだ。 二匹を捨てたり殺したりして、「とかいは」と呼ばれなくなるのは避けたかったのだ。 自分で殺せば死臭が付くし、謀殺してもどこでほかのゆっくりが見ているか分からない。 人間に飼われてしまえば、都会派のままでいられる。 何としてでても、人間に押しつけなくてはいけない。 俺は数枚写真を撮ると、きびすを返して路地裏から出ていった。 もう、ありすたちには用はない。 後ろで正気に返ったありすが叫んでいた。 「ああああああああ!ごべんなざい!ひどいごどいっでごべんなざい!ありずはおがじぐなっでまじだ!ゆっぐりじでながっだんでず!」 さっきまでのことは許してくれ、と言っている。 どうでもいい。 俺が振り返らないからか、ありすの声はどんどんでかくなり、上擦っていく。 「ゆっぐりいいいいいいいい!いがないでぐだざい!だずげでぐだざい!ありずはゆっぐりじでないんでず!ゆっぐりじだいのに! ゆっぐりじだい!ゆっぐりじだい!ぜんぜんゆっぐりでぎない!ゆっぐりなんでない!どごにもない!どごにもないいいいいいい! あ゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙ん゙!ひどい!おがじい!ごんなのおがじい!ゆっぐり!ゆっぐり!ほじい!ゆっぐりほじい! ゆっぐりがほじいよおおおおおおおおおおおお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」 結局ありすの本当の願いは、自分がゆっくりしたいことであって子どもを飼ってもらうことではなかったのだ。 ゆっくりがほしい、とありすはわめき続けている。 どれだけ望んでも、もうゆっくりたちにゆっくりする方法は見つからないだろう。 *** 悪臭で満ちた側溝の中で、れいむは目を覚ました。 「ゆっくり……あさだよ。おはよう…。ゆっくりしていって……ね………」 弱々しいれいむの声は、後ろに行くに従ってさらに小さなものになる。 それは独り言であり、れいむに応えるゆっくりなどどこにもいないからだ。 れいむの隣に、番だったありすの死体がある。 野良として生き抜いたありすの体は、ややしぼんでいてもいまだにれいむより二回りは大きい。 あちこちにかじられた痕跡があり、カビの生えた中身は五分の一ほどしか残っていない。 ありすの死体はあちこちに乾いたカスタードをこびりつかせ、ぴくりとも動かない。 「ありすぅ…ゆっくりしようね……ねえ、ゆっくりしていってね………ゆっくりしようよ」 れいむは死臭の塊となったありすにすりすりした。 自分のリボンと髪に死臭が染みつくのもおかまいなしだ。 もう、そんなものを嫌がる精神はとっくの昔に死んでいる。 「おちびちゃん…………」 れいむの目が動き、自分の後ろにあった三つの残骸を見る。 仲良く並んでいるのは、三つの干涸らびた饅頭だ。 ありすが一匹。れいむが二匹。 どの赤ゆっくりも、餓死したのが表情ですぐに分かる。 三匹の赤ゆっくりの顔は、干涸らびてはいるが苦悶で歪みきっていた。 最後の瞬間までゆっくりできないで、苦しみながら死んだのがよく見て取れる。 飢えて死んだ子どもたちをよそに、れいむだけはのうのうと生き延びた。 日光に追われ、ありすとれいむの家族が逃げ込んだのはこの側溝だった。 環境の変化に慣れる暇もなく、ありすはカラスに襲われて中枢餡に傷を負い、れいむの看護も空しく死んだ。 残されたれいむは、元飼いゆっくりだったこともあって餌を見つける才能はゼロだった。 飢えた子どもたちが泣き叫び、れいむはそれをどうすることもできずに見ていることしかできない。 人間に餌をたかることさえろくにできないれいむが行った最終手段は、番の死体を食らうことだった。 死んだありすの皮を食い破り、中の酸っぱいカスタードをずるずると啜った。 空腹のれいむは叫ぶ。 「じぇ!じぇ!じぁ!じあわじぇええええええへへへへへっっっ!」 うまかった。かつて飼いゆっくりだった時に食べたどんなあまあまよりも甘くて美味しかった。 涙を流してゆっくりできない自分に嫌悪しながら、れいむは久しぶりに満腹になった。 生きてゆっくりするためだ。れいむはありすの死体を食べるように、子どもたちに勧めた。 子どもたちは一匹残らず、それを拒否した。 「やじゃぁ……おかあしゃん…たべりゅのやじゃぁ…………」 「ゆっくちできにゃいよぉ………しょんなの…たべちゃくにゃい…………」 「おかあしゃん…おかちいよぉ……。どうちて…おかあしゃん…たべちぇへいきにゃの?」 子どもたちにとっては、死してなおありすはお母さんだった(まりさとは違い、ありすもれいむもどちらも「おかあさん」である)。 それを空腹になったからといって、食べることはできなかった。 どんなに勧めても、泣いてお願いしても、子どもたちは頑として死体を食べなかった。 口移しでカスタードを食べさせようとしたが、子どもたちは固く口を閉じて首を振る。 れいむの目の前で、三匹のおちびちゃんは苦しみながら衰弱していった。 れいむが死ぬのが恐くて番の死体をくちゃくちゃと噛み砕く横で、子どもたちは徹底的に苦しんで息絶えた。 残ったのは、無能なれいむだけである。 「みんな…いなくなっちゃったよ………。れいむ……ひとりぼっちだよ………」 罪悪感がれいむを苦しめる。 どんなにゆっくりしていた日々を思い出そうとしても、必ずありすが子どもたちを引き連れて妄想の中に乱入するのだ。 ありすは変わり果てた顔で、れいむの所業を罵る。 干涸らびた子どもたちは、じっとその様子をゆっくりできない顔で見つめる。 「れいむは……ゆっくりしてないよ…………。ゆっくりなんか…なくなっちゃったよ…………」 誰からも相手にされず、誰からも罰せられることもないれいむは、捨て鉢になって日なたに這い出した。 もうどうでもよかった。 死ぬのが恐くて番の死体を食べてまでして生きようとしたが、ゆっくりできない今となっては生きる意味もない。 「あ゙ぁぁあ゙…………!あづい……!あづいよぉぉおお……」 他の生物にとっては恵みとなる日光は、ゆっくり限定で苦痛の洗礼となる。 饅頭皮がまんべんなく炙られる痛みに、れいむは身を震わせた。 これが現実だ。 ゆっくりには苦痛に満ちたゆん生しか残されていない。 逃げ場はない。 「れいむは………ゆっくりしたいよぉ…………」 叶わぬ願いをれいむは口にする。 「でも……ゆっくりなんか、どこにもないよ………」 れいむは目を開けた。 直射日光はれいむの目を焼き、たちまち視界が異常な白に塗り潰されていく。 あまりの痛みに、自分が涙を流していることさえ分からない。 「ゆっくりしたい……ゆっくりしたい……ゆっくりしたい……ゆっくり…ゆっくり…ゆっくり…ゆっくり…ゆっくり……ゆっくりいいいいい!!」 言葉を忘れ、れいむは唾を飛ばしてゆっくりと叫び続ける。 それしか、れいむには残っていない。 れいむは、ほかの言葉がもう思いつかなかった。 「ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっぐり!…………ゆっくちぃいいいいいいいい!!」 れいむの声のトーンが突然跳ね上がり、口調が赤ゆっくりのような舌足らずなものになる。 声を出していたれいむの顔が変わる。 両目から感情がなくなり、顔が痴呆のようになる。 れいむは非ゆっくり症を発症したのだ。 ゆっくりできないゆっくりがストレスのあまり発症する病気を、ついにれいむは発症した。 「ゆっくち!ゆっくち!ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちゆっくちゆっくちゆっくちいいいいいい!!」 れいむは自分の異常に気づいた。 だが、もうそれを表現することができない。 もはやれいむにできるのは「ゆっくち!」と叫びながら出鱈目に跳ねることのみだ。 あちこちから、同様の叫びが聞こえてきた。 ゆっくりできないゆっくりなど、この街に掃いて捨てるほどいる。 それらが一斉に非ゆっくり症を発症したらどうなるだろうか。 「ゆっぐぢいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」 俺は叫び声で目が覚めた。 作業中にいつの間にか寝てしまったようだ。 「うわっ!……なっ!なんだ!なんだあ!?」 飛び起きるとキーボードがよだれで濡れている。 「ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちぃ!」 「ゆっくちぃ!ゆっくちぃ!ゆっくちぃいいいいい!」 「ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢゆっぐぢゆっぐぢゆっぐぢぢぢぢぢぢっ!」 とりあえずパソコンをシャットダウンし、俺は窓のカーテンを引いた。 外では不気味に跳ね回りながら、三匹のゆっくりが叫んでいた。 見事にれいむ、まりさ、ありすの三種類がそろっている。 「ゆっくちぃ!ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちゆっくち!ゆっくちいいいいいいいい!」 俺に気づいたのか、れいむがぴょんぴょん跳ねて窓際に立つ俺に近づいてきた。 だが、れいむの口からテンプレ通りの飯をたかる言葉が聞こえてこない。 代わりにひたすら「ゆっくち!」とれいむは叫ぶ。 叫ぶ度に苦しいらしく、れいむは目をぎょろぎょろと動かして苦痛を訴える。 「非ゆっくり症……か?」 あまり見たことはないが、ゆっくりしかかからない特殊な病気だということくらいは俺も知っている。 多大なストレスを長期的に感じたゆっくりがかかり、発症すると「ゆっくち!」と赤ゆっくりのような声で昼夜を問わず叫び続ける。 最終的に衰弱死するまで「ゆっくち!」は止まらず、理性さえも失って狂ゆになるらしい。 「ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆぐぢ!ゆぐぢ!ゆぐぢ!」 「ゆぢいいいいいい!ゆぢい!ゆぢい!ゆっぢいいいいい!」 「ゆっくち……ゆっくち……ゆっくち……ゆっ…く…ち…」 「ゆっっっっぐぢいいいいいい!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢいい!」 外に出てみると、道路には既に何匹かのゆっくりが姿を現していた。 時刻は朝の七時。朝の遅いゆっくりにしてはずいぶんと早起きだ。 しかし、一匹残らずそのゆっくりは非ゆっくり症を発症していた。 発狂したかのように唾を飛ばしてわめくもの。 虚ろな目でぼそぼそと呟くもの。 涙を流しながら訴えるように叫ぶもの。 耳を澄ませば聞こえてくる。 街のあちこちから沸き上がる「ゆっくち!ゆっくち!」「ゆっくちぃいい!」というゆっくりの叫び声が。 食性、日光、捕食者、ありとあらゆる方法で自然はゆっくりをゆっくりさせなくなった。 この八方塞がりの状況は、ゆっくりにとってものすごいストレスなのだろう。 今までは、辛い状況でも耐えることができた。ゆっくりは何だかんだ言って野生動物だからだ。 けれども、ゆっくりは退化してしまった。もう、野生動物として生き抜く力を失ってしまった。 そういう風に考えることもできる。 生きることそれ自体がストレスの中、非ゆっくり症を発症してもおかしくない。 こうしちゃいられない。 俺は家に駆け戻った。 公園に行こう。あそこなら沢山ゆっくりがいる。どんなゆっくりの姿が写真に撮れるだろうか。 (続く)
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ゆっくり爆発していってね 後編 22KB 観察 駆除 番い 群れ 自然界 現代 5作目です、前編からお読みくださいませ 群れのゆっくりたちが再び広場に集結したが、それがかなり異常な状態であると誰もが理解できた。 通常は成体ゆっくりだけが参加するこの場に、子ゆっくりどころか巣から出る事が全くない赤ゆっくりまで 総勢200匹近い群れの全てのゆっくりが長を今か今かと待ち侘びていた。 捕食種が活動を始める時間が近い事や、無理して外に出させた赤ゆっくりが愚図り始めた事でゆっくりの中から文句の声が上がり始める。 「みんなしずかに、せいしゅくにしてね!!」 長ぱちゅりーが指定席である、割った竹の上に乗り上げると、眉を吊り上げたゆっくりたちが一斉に長を罵り始めた。 「おさっ、もうれみりゃたちがすがたをあらわすじかんだよ!ゆっくりできないよ!!」 「れいむのあかちゃんがおなかをすかせているよ!!ゆっくりしないですにかえしてね!!」 「むきゅー、いったいなにがはじまるの?なにかあったの?」 様々な反応を示すゆっくりたちに話が進めないでいると、娘ぱちゅりーが何人かの友人を引き連れて長ぱちゅりーの前に立った。 「「「「「ぜんいんしずかにしてね!!!」」」」」 張り合わせた声が広場に響き渡る、しんっと一瞬だけ静まり返ると、その期を逃さず長ぱちゅりーは言葉を発した。 「みんなごめんなさいねっ、いちぶのゆっくりはしっているとおもうけれど、きょうあまあまさんがすのちかくでおちていたわ もしかしたらそれにどくがはいっていたかもしれないの!!いまからみんなをしょうどくをするから、 あまあまさんをたべたゆっくりは、むこうのひろばにあつまってほしいの」 消毒というのは勿論嘘で言い包めるための方便だった。 毒という単語に怯えた一部のゆっくりは混乱するが、長ぱちゅりーが消毒すれば大丈夫だからと落ち着かせ、ゆっくりたちは一斉に列を作り始めた。 長ぱちゅりーは覚悟していた。どれほどのゆっくりが爆弾を抱えているのかと、 なるべく少なくあって欲しいと願いながら細めた眼をゆっくりと開くと、 そこには群れのほぼ半数、100匹近いゆっくりが列を成していた。 「……むきゅう……」 パッと見ると稼ぎ手であるまりさ種が多く、中には子ゆっくりや、極僅かであるが赤ゆっくりまで存在した。 親が取ってきた物を分け与えられたのだろうか、どちらにしてもかなりの損害であるのは明瞭だった。 娘ぱちゅりーとは既に話し合いを終えており、山の中腹にある湖畔で消毒の名目として身体を洗う、ということで決定していた。 長ぱちゅりーは、生涯の別れとなるであろうと覚悟して娘ぱちゅりーを見た。 そこには気丈に振る舞い、爆弾持ちのゆっくりを先導する彼女の姿があった。 事は順調に進むと思えたが、その時――。 一部から甲高い悲鳴があがった、見ると混乱を引き起こさせないためにみょんが持ってきたブルーシートで覆ってあった ありすとまりさの無残な死体が大衆の眼下に曝け出されていた。 暇を持余した子ゆっくりたちが誤ってブルーシートを外してしまったのだ。 「ゆゆ!!あ、あれはありすだよ!ど、どうしてあんなふうになってるの!?」 「わ、わからないよー、わからないよー!」 「むきゅー……な、なんてしにかたなの!?ひどすぎるわ!!」 混乱し始めるゆっくりたち、長ぱちゅりーが杞憂した最悪の展開が引き起こされてしまった。 直ぐに一部からあまあまを食べたせいだ、と声があがり列が崩れ始める。 こうなればもう終わりだ、暴走したゆっくりたちを納得させる事は不可能になってしまう。 「ぜんいんだまってね!!!!!」 混乱を収拾したのは、娘ぱちゅりーだった。 ぱちゅりー種とは思えない程の大きな声で一喝すると、母に代わり近くの岩場に乗り上げゆっくりたちを見下ろした。 「あまあまさんをたべたゆっくりはれいがいなくぜんいんばくはつしてしまうわ!!! ぱちゅりーのありすは……まりさのばくはつにまきこまれてしんだのよ!!」 ごくりと息を呑む一同、夜風に靡かれたありすとまりさの死骸は何も語らない。 「ゆぐうぅう!!あまあまざんをだべだがら、でいぶじんじゃうの!?いやだよぉ……いやだよぉお!!」 「いやなのぜぇ!!ばでぃざはじにだぐないのぜぇ!!!」 「おきゃーじゃあぁん、まだありずじにだぐないよぉおお!!」 自身に突然と降りかかった災いに、皆納得できない様子で騒ぎ立てる。 その不幸の渦中でも娘ぱちゅりーは叫び続けた。 「ぱちゅりーもあまあまさんをたべたわ!みんなもかぞくをまきぞいにしたくなかった…… ぱちゅりーにしたがって、ゆっくりぷれいすからはなれるのよ!!!それとも、たいせつなゆっくりたちをまきぞいにしたいの!?」 涙する者、嗚咽を漏らす者、悲しみにひれ伏す者、群れを襲った悲劇はあまりにも大き過ぎた。 だが、娘ぱちゅりーが功を奏したお陰で皆が皆現実を理解することだけはできた。 長ぱちゅりーは時間がないことを承知の上で、声を荒げ宣言する。 「いまから5ふんだけじかんをあたえるわ!!みんな、かぞくとのわかれをすますのよ!!」 5分という生々しいタイムリミットが、悲しみに身を揺らしていたゆっくりたちを立ち上がらせた。 まりさは新妻のありすと産まれたばかりの赤ゆっくりたちに囲まれて今生の別れを惜しんだ。 「まりざぁああ……どうじで……どうじでぇごんなごどにぃい……」 「ありす、なくのはやめるんだよ!まりさのおちびちゃんたちをたのむのぜ!」 現実を真摯に受け止め落ち着き払ったまりさは家族の前で決して泣く事はなかった、 変わりに涙を流したありすと赤まりさ、赤ありすと一家全員で最後のすーりすーりをし始める。 「おちょうちぁぁん……もっちょゆっきゅちしていってよぉ!!まりちゃともっちょあちょんでほちかっちゃよぉおお!!」 「ありしゅもはなれちゃくないよぉおお!!おちょうしゃん!!」 「ごめんね、おちびちゃんたち……まりさはばちがあたったんだよ……しかたがないんだよ」 まりさには負い目があった、それは自分だけがあのあまあまさんを食べて満足してしまった事で、 この理不尽な仕打ちも自身の身勝手さが産み出してしまった天罰なのだろうと思えて仕方がなかったのだ。 結果としてまりさが食べてしまった事で妻や子供たちは死なずに済んだが、ゆっくりらしからぬ達観した境地にあるまりさは せめて愛すべき家族の前では恰好良い姿のままでいようと、精一杯の笑顔を振り撒いたのだった。 ちぇんは家族との別れを済ます事も叶わず、鋭い表情を浮かべる成体ゆっくりに囲まれて身を縮ませていた。 「おまえのせいなんだよ!!れいむのおちびちゃんがこんなめにあったのはおまえのせいなんだよ!!」 「ゆっくりしないでしんでね!!せきにんをとってね!!ぐずぐずするんじゃないよ!!」 ちぇんとありすは、怒り狂った友人の親たちに取り囲まれている。 あまあまさんを自分たちだけで独占せず群れの仲間たちに分け与えたのが、最悪の形で裏目に出てしまった。 2匹は親との最期の別れも出来ず、友人の親たちが元凶はこの2匹であると決め付けて有りっ丈の罵倒を投げつけている。 友人の子れいむや子まりさも親の脇で泣きながら険しい表情を作って、ちぇんとありすを恨めしそうに睨み付ける。 「ゆあぁあああん!!おがぁあざんっ!!まりしゃはじにだぐないよ!!ぢぇんどありずのせいだよ!!!」 「でいぶだっでじにだぐないよぉおお!!しねっ!!げすのぢぇんとありずはゆっくりしないでじねぇええっ!!」 ちぇんとありすは身を寄せ合い、貴方たちだって満足そうに食べていたじゃないか、と出掛かった言葉の全てを飲み込んで 必死に必死に耐えている。長ぱちゅりーが決めたタイムリミットはもう近い、どうしてこんな事にと隠し切れない涙を流して 俯いていると2匹の親である親ちぇんと親ありすが駆け寄ってきて取り囲まれたゆっくりの壁の隙間から名を呼んだ。 「ちぇんのおちびちゃん!!おかーさんだよー!!わかってねー!!」 「ありすちゃん!?おかーさんよ!!そこにいるの!?」 円陣を組むように取り囲まれたちぇんとありす、その陣の中心に割って入ろうとした親2匹は強い体当たりを受けてよろけた。 見上げるとぎりぎりと歯軋りを立てた友人の親ゆっくりたちが凄まじい形相で立ち塞がっていた。 「どうしてそんなことするの?わからないよー……」 「お、おねがいですっ!ありすちゃんにあわせてくださいっ!!あとでなんどでもあやまりますから!!もうさいごになってしまうのよ!!」 親ちぇんと親ありすは、自分たちの娘の所為で被害が広がってしまった事実を受け止め、親ゆっくりたちの心情を察し罪悪感を感じていた。 だがそれでも、この最期の瞬間だけは母親として娘の支えになってやりたいと切実に願っていた。 しかし納得のいかない友人の親たちは、それぞれ眼を合わせると2匹に無情とも言える台詞を突っぱねた。 「だめだよ!あわせるわけにはいかないよ!!これはばつだよ!!」 「そうだよ!!だれのせいでこうなったのか、ゆっくりりかいするべきなんだよ!!」 親たちの煮えたぎる怒りは最期の時間を与えることさえ許さなかった。 口を歪め眉を吊り上げると大きく身体を膨らませてちぇんとありすを跨った肉壁をより一層強化する。 絶対に進ませない、絶対に触れ合わせない、負の感情が異様な空気を作り出す。 「おねがい……おねがいですっ!!……ありすちゃんっ!!きこえるっ!?おかーさんはありすちゃんのことが――」 「うるさいよっ!!だまってよっ!!つたえさせないよっ!!ゆっくりりかいしたらはなれるんだよ!!」 諦めた親ありすがせめて自分の思いの丈を娘に知っていて欲しいと声を張り上げるも、 その僅かな願いさせも親れいむの轟音に掻き消された、親ちぇんと親ありすはボロボロと砂糖水の涙を流して身体を震わせる。 そして各々の想いを引き離すかのように、長ぱちゅりーの号令が掛かった。 「ありずちゃんっ!!ありずちゃああん!!!!ありずちゃああああんん!!!!」 「ちぇええんっのおぢびじゃぁあああん!!!ちぇええええええええんっっ!!!!ちぇぇえぇえぇええん!!!」 1匹の親まりさに弾き飛ばされるように、娘ぱちゅりーが先導する広場へ向かわされるちぇんとありす、 背後には大好きな母親の悲痛な叫びが聞こえてくる、返事をしようにも今も睨み付けている親まりさがそれを許さない。 友人の子れいむや子まりさが2匹にぶつかってその怒りの矛先を向け、後ろ髪を引かれる思いでちぇんとありすは列に戻っていく。 しんぐるまざーのれいむはこれから文字通りの彼岸へと旅立っていく、爆弾を抱えたゆっくりたちが山を登り始める後ろ姿を見つめていた。 最初に長ぱちゅりーが消毒をすると言った時、捻くれ者のれいむは、きっと消毒というのは嘘で残ったあまあまを 群れのみんなで食べる気なんだと思い込み列には並んでいなかったので、周囲に爆弾を抱えたゆっくりではないと見られていた。 内心、怯えて小刻みに身体をぶるぶると震わせているが、れいむは持ち前の自己中心的な思考がそれを緩和させていた。 (れいむはしんぐるまざーでかわいそうなんだよ!れいむだけはきっとだいじょうぶなんだよ!!) 自分を納得させるようにれいむは心の内で何度も何度も呪文のように詠唱する。 その近くで歩く死者の列を蚊帳の外といった感じにボーっと眺めているれいむの赤まりさが母の異変に気付いて尋ねた。 「おきゃーしゃん、どうしちゃの?ふるえちぇるよ!」 「な、なんでもないんだよ。だいじょうぶだよ!」 死んだような顔をして目の前を通り過ぎていく爆弾を抱えたゆっくりたちと、その家族の別れを惜しむ悲鳴が交差するその場で れいむは根拠のない自信を盾にどうにか立っていた。 直ぐ傍でご近所だった、長ぱちゅりーにれいむだけ優遇されていて不公平だと訴えたゆっくりまりさが通り過ぎる。 まりさはれいむに気付くと一度だけ冷え切った笑みを垣間見せ、列に紛れ込んで消えていった。 (れいむだけはへいきなんだよ!!あんなゆっくりたちとはちがうんだよ!!) れいむの震えは決して止まらない、その時が近付くまで――。 細長い行列を作り、100匹近いゆっくりの列が山の中腹を目指して歩き出す。 背後から泣き叫ぶ家族の声に何度も振り返りながら爆弾を腹の中に抱えたゆっくりたちは前を進む、 突然、前方の集団の方からがパンッと乾いた音が響き、遅れて悲鳴があがった、ついに始まってしまったのだ。 長ぱちゅりーがせめてもの情けとして最期の時間を割いた事が、不幸にも最愛の家族たちに間近で爆散していく凄惨な姿を見せ付ける結果になってしまった。 「ちぇんのおちびちゃんたち、みんなでなかよくくらすんだよー」 ちぇんの母親である親ちぇんは番のゆっくりらんと一度だけ視線を重ね頷くと、振り向いて走り始めた。 背後で残した子供たちの泣き声が聴こえる、しかし親ちぇんは一度も振り返らず死者の列を目指して突き進む。 「おきゃぁあしゃん、いかないでぇええ!!わがらないよぉおおお!!!」 親ちぇんは番のゆっくりらんに残された子ゆっくりの全てを託し、自身は生きて帰ってくる事はないと知りながら子ちぇんを見守り 最期まで側で寄り添っていてあげようと決め込んだのだ。 途中、同じように覚悟を決めた親ありすと合流すると、お互いに顔を見合わせて困ったような顔で小さく笑うと 死者の列に紛れて姿が見えない我が子を呼び続けた。 既に何匹かの爆発が始まっている、荒波の如く悲痛な叫びが交錯する列に2匹は潜り込んだ。 「ちぇえぇええん!!おかーさんがここにいるんだよー!!わかってねー!!」 「ありすちゃんっー!!おかーさんもいっしょにいくわ!!!どこにいるのーっ!?」 親の子を思う願いが天に通じたのか、奇跡的にも僅か前を行く娘の姿を発見し2匹は大声でそちらを呼んだ。 聞きなれた母親の声が伝わり振り返ったちぇんとありすは、その姿を見るなり言い表せないほど嬉しそうに涙を流して母の胸へと飛び込んだ。 「おがぁああざんっ!!わかるよぉおお!!わがるょよぉおお!!!」 「おかーさぁあん、ありす、どっでもあいだがっだ、あいだがっだよぉおおお!!」 自分を想い、死ぬ事すら承知の上で駆け付けてくれた母親の温かさにちぇんとありすは まるで赤ゆっくりに退化したようにわんわんと泣いて身を寄せ合い甘えた。 遠くの方でその様子を羨ましそうに見つめる子れいむと子まりさがいる、2匹の親はここに来てくれはしない。 れいむとまりさは目の前にある家族愛と自身を比較して、孤独に押し潰されそうになっている。 そんな2匹を親ちぇんと親ありすは微笑みこっちに来るように促した。 「おばざん……ま、まりざも……まりざもいっしょにいていいのぜ?……」 「ちぇんとありずにひどいごどじだ、でいぶも……いっしょでい”い”の?」 せめてもの罪滅ぼしのつもりだったのか、親ちぇんと親ありすは慈愛溢れる笑みを浮かべて頷いた。 「「「「おばざああんっ!!」」」」 「だいじょうぶよ、まりさちゃんも、みんなでいっしょにいこうね……みんなでいっしょならこわくないわ!」 「れいむもちぇんもいっしょだよー、みんなみんないっしょだよー!」 深い愛情に包まれた家族が爆発に巻き込まれたのは――ほんの一瞬だった。 ちぇんが爆ぜ、ありすも遅れて爆ぜると、そこには身体の上部を失った屍と無数の穴を開け息絶えた死骸が、物言わぬ小麦粉の塊と化した。 その家族たちが派手にば爆散した様を後ろで見ていた新妻のありすの番であるまりさは、 この断末魔が広がる悪夢の光景とも言える場所でついに押さえ付けていた精神の楔が弾け飛んでしまった。 まりさは何かに取り付かれるようにゆっくりと列を離れると、遠くからこちらの様子を見守っている残されたゆっくりたちに近付いていく。 それに気付いたれいむとみょんが、急いでまりさの足を止めさせ身動きが取れないように伸し掛かった。 「まりさっ!!そっちにいっちゃだめなんだよ!!ゆっくりしないでれつにもどるんだよ!!」 「かんけいないゆっくりがまきこまれてしまうみょん!!いっちゃだめみょん!!」 「はなぜぇえええ!!はなぜぇえええ!!!いやだぁあああっ!!まだぁああじにだぐなぃいいっ!!!」 近くで呆気なく死んでいく仲間たちの惨状に、もうまりさは耐え切れなくなっていた。 あれほど気丈に振舞っていても、つまるところがこの阿鼻叫喚の地獄絵図ではまりさが壊れてしまうのは無理もない。 かくいうまりさの身体を拘束しているれいむやみょんも既に限界は近い、こうして役割を演じる事でどうにか自我を保っている状態に過ぎない。 「いぃやぁだぁぁああ!!まりざはまだやりだいごどだっであるんだぉおおお!!たすげでぇええよぉおおお!!ありぃいいずゅうう!! おぢびじゃぁあんんっ!!いやじゃああっ!!じにだぐないっ!!まだまりざはじにじゃぁぐなぁぁぁああいよぉおおお!!!」 まるでポップコーンが作られていく工程を見ているようにパンッパンッと鈍い音が、あまあまを食べていない残されたゆっくりたちに伝わる。 一つ一つの音が響く度に最愛の者が消えていく事実に涙し、せめてもの願いを込めて名を呼んでいる。 既に見えなくなった娘の事を思い、長ぱちゅりーは群れの仲間たちが消えていく様子をジッと見つめ脳裏に焼き付けていた。 ふと長ぱちゅりーは列を脱線したゆっくりが視界に入るとそれを直視した、列を外れた3匹のゆっくりがこちらにじわじわと近付いているではないかと。 「むきゅー、あれは……まりさ……なの?ど、どうしてっ……!」 身体を封じ込めようと力で圧力を掛ける、れいむとみょんを引きずって、ゆっくりとまりさが這い寄ってくる。 長ぱちゅりーは、ともかく残った者の安全を優先するために急いで巣に避難するように訴えるも、 多くの仲間たちは気が動転しているため耳には伝わらない、雲に掛かった月が顔を覗かせ月明かりを地上が照らすと まりさが生にしがみ付こうと必死の形相でこちらに向かってくるのがよく分かった。 「まりざぁああ!!まりざぁああああっ!!!!」 「ゆわぁあああんっ!!おちょうしゃぁああんっ!!!」 一組の親子が、こちらに迫ってくるゆっくりが自分の家族の者であると気付き身を乗り出す。 ありすとその子供たちだ。 「いけないわっ!!だれか!!!だれもいいからありすたちをとめてぇええ!!!」 押さえ込んむ2匹を背負って徐々に距離を詰めていくまりさに、ありすたち一家が駆け寄ろうと走り出す。 それがどういう結果になるのか容易に想像できた長ぱちゅりーは引き止めるために叫ぶ。 正気を保っていたゆっくりみょんとゆっくりちぇんがありす一家の傍に居た事が幸いした。 まずちぇんが急いでありすたちの前に立ち塞がり、遅れてみょんが背中を押す形でありす一家の動きを封じた。 「だめだよー!!ありすたちもまきこまれちゃうよー!!」 「おねがいはなじでぇえ!!ありずはどうなっでもいいのよ!!まりざがっ!!まりさがぁあっ!!」 新妻のありすが、みょんの身体から逃れようと必死にもがく、 じりじりと這い蹲って距離を詰めるまりさに異変が起こったのは直後のこと。 「ゆがっ!?……ま、まりざ、じぬの!?い”やだぁああああ!!ごんなごどでじにだうあんあ”っ――」 一瞬、まりさの呂律が回らなくなったと思えば全身がみるみるうちに膨らんでいき、 寒天で作られた目玉が内圧に押されて今にも飛び出しそうになった。 呆気なく限界点を超えボンッと音を立てて、まりさの餡子は内部から破裂した。 まりさを抑えていたれいむとみょんは散弾を真っ向から喰らい、機能を停止するように息絶えた。 最愛の番の内臓物である固まった餡子の一部が凄まじい速さでありすの頬を掠めていくのを見て、ありすは番のまりさの凄惨な死に際を理解してしまった。 「いやぁああああぁぁああああ!!まぁありぃいさぁあああぁっ!!!」 「おちょうしゃぁああんっ!!」 ありすを押さえ付けていた、みょんとちぇんはそれらの行為が意味を成さなくなったと判断して 泣き崩れ頭を垂れた一家を背に悲しそうな顔をして離れていく。 入れ替わり、しんぐるまざーのれいむが白目を向いて一家の側に近寄ると、亡骸をれいむの大きな揉み上げで指してぶつぶつと何かを呟いた。 どうも様子がおかしいと長ぱちゅりーは恐る恐る近付くと、カッとれいむは見開いて喚き散らした。 「でいぶはがわいぞうなしんぐるまざーなんだよぉおおおぉおおお!!!!!」 平伏して嘆くありすに徐に伸し掛かり、しんぐるまざーのれいむは気が狂ったようにありすに懇願する。 「ありずはでいぶをだすげなぐっちゃいげないんだよぉおお!!でいぶはしんぐるまざーなんだよぉ!!だすげるのはどうぜんだんよぉおおおお!!!」 「なにずるのっ!?はなじでっ!!まりさぁああ、たすげでっ!!まりざぁああああ!!」 「おきゃぁしゃんをはにゃちゅんだじぇ!!」 れいむはありすを逃がさないように巨体な身体を押し付ける、ありすは突然襲い掛かり訳の分からないことを言い始めたれいむに困惑していると、 傍らで泣いていた赤まりさが親ありすを助けるべく小さく転がって、れいむに意味のない体当たりをしている。 「でいぶはばぐはづじだぐないぃいいい!!ありずだずげでぇえええよぉおお!!でいぶはじんぐるまざぁああなんだよぉおおお!!」 自分だけは大丈夫だと自己暗示を掛けるように何度も胸のうちで繰り返していたしんぐるまざーのれいむであったが まじまじと、ゆっくりたちが爆発して死んでいく現実を突きつけられ、彼女もまりさと同様にメンタルの部分を支えきれなくなった。 誰でもいいから助けて欲しい、あんな惨たらしく死んでいくのは絶対に嫌だ、憔悴しきったれいむは たった今家族を亡くし悲しみに溺れたありすに、それが無駄であるかどうかの判断さえつかずに延命を乞う。 長ぱちゅりーはれいむが『爆発』という単語を発したことと、れいむの背中の表面にゴツゴツとした丸い塊が、虫が地を這う様に移動しているのを目撃し、爆弾持ちであることを瞬時に見抜いた。 どうして爆弾持ちがここにいるのか、という疑問の一切を投げ捨て長ぱちゅりーはとにかく叫んだ。 「みんなとおくににげるのよっ!!れいむがばくはつするわ!!!」 導火線に火がついたしんぐるまざーのれいむを見る一同、れいむの異変を察知して蜘蛛の子を散らすように逃げ出すゆっくりたち。 れいむはまりさと同様に内圧で大きく膨れ始める、それでもありすを離すことはなく助けを求めている。 「だずげでよぉおおお!!でいぶをだずげでよぉおおおお!!!」 「おねがいはなじでぇっ!!はなじでよおぉおお!!!」 そして、しんぐるまざーのれいむは爆発した。 長ぱちゅりーは爆死したゆっくりの死体に下半身だけが残っている事を思い出し、 身を伏せる回避法を選択した事が命を繋ぐ結果になった。 降り注がれたれいむの餡子を寸前のところでかわし傷一つなくやり過す、 存えた長ぱちゅりーは皆の無事を願い周囲を見ると、その光景は凄まじいものだった。 「で、でいぶのあんござんが、おなかがらででるよぉおおおお!!あんござんゆっぐりじないでもどっでぇえよぉおおおお!!!」 腹を割られた子れいむが朦朧とする意識の中で、ピコピコと揉み上げを動かして外に溢れ出た餡子を腹の中に収め直そうとしている。 「まっぐらだよぉおお!!、みんなどごいっだのっ!?ありずをひどりにじないでぇえ!!!」 両目を潰されたありすが、頬からカスタードを撒き散らしながら見知ったゆっくりを探して彷徨っている。 「おちびじゃあぁあん!!おねがいだがらゆっぐりじでいっでね!!ゆっぐりっ、ゆっぐりいぃいい!!」 「ゆぴょぉっ……ゆぷぇ……」 身体を真っ二つに裂かれ、生クリームを盛大に噴出した赤ぱちゅりーにぺーろぺーろと舌を嘗め回す親まりさ、 親まりさ自身も穴の開いたこめかみの辺りから餡子が垂れている。 「お、おぎゃぁああじゃんっ!!うごいでよぉおお!!いっじょにゆっぐりじようよぉおおお!!」 子を庇って無数の大穴を開けた親れいむに反発性のないすーりすーりを繰り返している子まりさなど ほとんどのゆっくりがしんぐるまざーのれいむの爆発の煽りを受けて致命傷となる怪我をしている。 放って置けば助からない、だがどうすることもできない、長ぱちゅりーは振り返り爆心地を見ると ありすとその子供たちの骸としんぐるまざーのれいむの一部であったあんよが残されている。 「むきゅー……みんな、みん……な、いきて……る、ゆっく……り、は……あつ……ま……」 とにかく生きている者だけを集めて二次事故を防ぐ為に長ぱちゅりーは動き出そうとするが、ぺたんっとその場で転がる。 ぱちゅりー種であるが故、病弱な身体の疲労は限界に達していた。 長ぱちゅりーは避難を叫ぼうとしたところで意識が途絶えてしまった――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 依頼主の老人が提供してくれた古屋、仮設のモニタールームとして機材を詰め込んだ一室で 加工所の職員が唸り声を上げて、小さな画面に食い入っていた。 「この結果じゃ商品化は難しいな……」 モニターには昨夜の出来事が克明に写されていた。 ゆっくり爆弾を食べたゆっくりはもれなく全滅したが、残ったゆっくりもそれなりの数に昇っていた、 群れ全体の3割の生存を監視カメラが捉えた映像を見て確認できた。 それなりの成果はあげた様に見えるが、企画課の職員たちは不満気に煙草を吹かしている。 「あの群れの長っぽいゆっくりぱちゅりーの指示が的確ですね」 「野生にしちゃ賢すぎるな、元飼いゆっくりか?」 長ぱちゅりーを指差して若い男が囁く、ヘッドホンを片耳に充てて音声を拾っているもう片方の職員は長ぱちゅりーの言葉を聞いて興味深そうに頷いた。 「やっぱり分離と分断の指示はこいつが出してるな」 「へぇ、やるねぇ~」 「やるねぇ~、じゃないですよ。この企画通らなかったら主任の立ち位置やばいんじゃないんですか?」 しれーっと目を細めて若い職員は上司である課長を見て呆れた顔をしてみせた。 「まぁでも首は繋がるさ、このぱちゅりーさえ捕獲できればね」 「ん?どういうことです?」 「俺の見立てじゃこいつは間違いなくプラチナ級だよ、実験課のいい土産になるぞ」 プラチナという単語に一番下っ端の職員を除いて全員が息を呑んで目を見合す。 「プラチナだからってどうなるっすか?」 一人ピンとこない様子の若年の職員が尋ねると、課長はにぃっと不敵な笑みを作ってモニターの中の長ぱちゅりーを指差した。 「お前プラチナバッチ持ってるゆっくりの相場って知ってるか?」 「知らないっすけど……」 「外車が新車で購入できるくらいすんだよ、冗談抜きで半端ないぞあれは」 「マジっすか!?……自分の年収より上……なんすか……」 課長はパンッと手を叩くと、職員たちは全員注目した。 「Bプランから変更してCプランでぱちゅりー種だけ捕獲、残りは全処分でいこう、このぱちゅりーさえいれば巻き返しは出来るさ」 「了解っ!」 この後、長ぱちゅりーが築いたゆっくりプレイスは人間たちの手によって、ぱちゅりー種を除いて1匹残らず抹殺された。 加工所に送られるゆっくりの中に長ぱちゅりーの姿があったが、その眼にあるべき輝きは既に失われている。 長ぱちゅりーには塀の中で、幸せかどうかは別にしても貴重品として大切に扱われるゆん生が待っている。 筍の茂る山に再び平穏が戻ると、そこにゆっくりの姿はなかった――。 あとがき 元ネタは某ロボットアニメです、加工所の職員の苗字もそれだったりします 前後編とやや長くなりましたがここまで読んで頂き感謝です、お付き合いありがとう御座いました 今まで書いたもの: anko2166 ゆっくり虐殺お兄さんの休日 anko2155 いつか見た赤染め姉妹たちの憧憬 anko2125 ゆっくりおうちせんげんの末路 anko2103 ゆっくり熟年離婚 書いた人:おおかみねこあき
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柊かがみは大学に入っても数ヶ月が経ったが、親しい友人が出来なかった。 一応、志望する大学の法学部に合格したものの、親しく同窓と話すことは稀だった。 高校時代自分は四人でつるんでいたし、その連中以外にも二人、 中学時代から付き合いのある友人がいた。 しかし、大学に入ってから高校時代と同じような人間関係を作れずにいたのだ。 かがみは一人で平気な人間ではなく、寂しさを感じていた。 このままでは大学に行く気自体がなくなってしまうのではという恐怖にさえ駆られた。 何故友人が出来ないのだろう? かがみは考えた。 孤独に苦しむかがみは楽しかった高校時代を思い出していた。 そして、今の自分の同窓とかつての友人たちを比較して見た。 かがみはあることに気づいた。それは自分の友達は特別な人であることに気がついた。 こなたはキモオタで友達がなく、かがみ以外頼る人が居ない嫌われ者だった。 特に、一部のクラスメートはこなたを 「気持ち悪い」「空気読めない」「ウザイ」「こなたの顔見るとイライラする」といって特に嫌っていた。 みゆきさん大人で自分をしっかり保っていルタイプの人間で、誰とでも仲良くできるが、だれとも深く付き合わないタイプのひとだった。 クラスメートと深く付き合わなくとも多くのクラスメートから信頼されていた人格者で、たとえ、クラスメートが暴走しても上手くフォローしてくれる人だった。 自分はみゆきに甘えていたことに気が付いた。 つかさは、地味で目立たず奥手なため、姉である自分を頼っているような状態だった。 あやのとみさおはいま大学での同窓によくいる普通の人だったが、 かがみ自身がこなたやみゆきやつかさと一緒にいることを好んでいた。 このように自分の友人を思い起こすと、かがみは自分が、こなたのような嫌われ者、 つかさのようなおとなしい子、みゆきのような大人びた人としか人間関係を築いていなかったのであった。 妹であるつかさはともかく自分を頼るしかないカス、自分を寛容に受け入れてくれる大人なひと、 これが、かがみの友達の内容であった。 つまり、かがみは同世代の普通の児とは、あまり仲良くしていない高校時代だったのだ。 「このまま行くと同世代の普通の人と親しくなるのは無理なのかしら?」 かがみは心配になりだした。 「自分は同世代の普通の人と親しくなれないのではないか」 かがみがそんな意識に駆られる反面、もう一人のかがみがいた。もうひとりのかがみ曰く、 「子供でもあるまいに、つるんで喜んでいる年か、かがみには将来に向けてやることがあるだろ。」かがみは法学部に決めるとき弁護士になろうと思っていた。そのために法学部に入ったのだから、やることはたくさんある。 かがみは思い直し、自分の心をねじ伏せた。そして「そのうち親しくなる人もできるだろう。無理に親しい友達を作ることもない。実際、今親しくはなくとも必要なことを尋ねる相手はいる。」と思うことにした。 「落ち着こう」かがみは最近おぼえたタバコをふかせた。 「ふー」タバコをふかせて落ち着くと周りに目を向ける心のゆとりもできた。 しかし、タバコの力で落ち着きを取り戻しても、かがみの目に映るものは大学の同窓たちが楽しそうにつるんではしゃいでいるすがただった。 かがみのように法曹を目指すものもグループを作って勉強会をしているようだった。 一人で大学にいるのはつらい。そう思って、かがみは家へ帰ることにした。 大学を出て、家に向かう電車の中は、かがみにとって居易い場所だった。 誰もが他人な電車の中では自分の孤独を感じずにいられるからだ。 しかし、楽しかった高校時代を思うと、やはり今の自分は孤独であることを感じずにはいられなかった。 かがみはセーラー服の集団と乗り合わせると、車両を変えることにしたいた。 今のかがみの一番の友達は「司法試験向け判例六法」である。 これにのめり込むことで孤独を感じないように勤めていた。 電車が鷲宮駅に到着すると、大学にいるよりはましな心になった。 少なくとも家に帰ればつかさやまつり、いのりがいて孤独を感じずに済むからだ。 家に着き、鍵を開け家の中に入ると、つかさの話し声が聞こえる。どうやら電話をかけているらしい。 つかさ「それじゃ。」 つかさが電話を終えた。 つかさ「お姉ちゃん、お帰りなさい。」 かがみ「何の電話?」 つかさ「今度、大学の友達がお料理のコンクールに参加するから一緒にやらないかという話。お姉ちゃんも応援に来てよ。」 かがみ「いいけど………」 つかさはうれしそうにパンフレットをかがみに見せた。それは、ホテル業界が開催する将来の一流シェフを発掘するコンクールのパンフレットだった。 つかさ「優勝は無理だけど、自分がどれぐらいできるか試して見たいんだ。」 つかさは、将来料理で身を立てたいと思い大学の栄養学科に進んだのであった。 大学入学直後は今までのつかさだったが、 大学生活に慣れるとともに変わり始めてきたことにかがみは気づいていた。 以前は家族としかやり取りのなかったつかさの携帯につかさの学友からのメールや電話が掛かって来る様になった。 これと同時に、つかさは以前になくよく友人と出かけるようになってきていたのである。 かがみ「これに参加すること誰が言い出したの?」 かがみは、思わず口にしてしまった。あわてて、動揺を悟られぬよう平静を装った。 高校時代のかがみならこんなことは口にしなかっただろう。 つかさはやや不思議そうな顔をして答えた。 つかさ「お友達。お友達がね、参加したいのだけど一人じゃ照れくさいし怖いし自信ないし、 どうしてもつかちゃんと一緒に参加したいのって言われたの。」 つかさは照れ笑いしながら答えた。つかさは悪くはない。しかし、今のかがみの胸には応えた。 いつも、姉である自分の後ろからついてくるだけで自ら何かをするような人間ではなかったつかさが いまや、友達を自ら作り、しかも、その友達に頼られている。 何もかもがかがみ頼りだったつかさではなくなってきているのだ。 「つかさでも大学で友達を作れたのに………。」かがみの孤独感はより一層のものとなった。 かかみ「がんばって、つかさ、応援しているから」 つかさ「うん。ありがとう。」 つかさは明るく答えはねるように小走りで自分の部屋に戻っていった。 かがみは、全身が気の重さに支配されていることがわかるように重い足取りで部屋に戻った。 部屋に戻ったかがみはクッションを整え、ベットにもたれかかるように座った。 そしていまや心のよりどころでもあるタバコに火をつけた。最近タバコの量が増えている。 さびしさの数だけタバコに火をつけているかがみであった。 昨晩は嫌な夜になった。つかさへの複雑な思いから部屋に引きこもり、結局眠ることさえ出来なかったからである。 徹夜明けで身体がだるい。それでも根が真面目なかがみは授業をサボることはしたくなかった。 一時限目の教室に入り、適当な場所に席を取った。相変わらず会話のない学生生活である。 暇つぶしを兼ねて、手帳を取り出し今後の予定にチェックを入れた。丁度、今日はサークルのコンパの日に当たっていた。 かがみは、主に法曹を目指す人たちのサークルである「志法会」というサークルに加入していた。 高校時代は部活を熱心にやるタイプの人間ではなかったが、 大学では多目的に使えるからサークルに入っておいた方がいいというまつりの忠告を受け、 自分が目指す法曹を同じように目指す人たちのサークルを選んだのである。 志法会の一年生はまだあまり活動していないし、ここには法学部以外の人もいるらしい、 「もしかしたら自分に合う人がいるかも知れない。」 そう思ったかがみはあまり興味を持っていなかったサークルのコンパに俄然興味が湧いてきた。 なんだか、昨日眠れなかった疲れも消えていったように思えた。 その日、かがみはどうやってコンパで親しい人を作ろうかということが脳内にこびりついていた。 「とにかく、話が続かないのだから、話題を用意しておこう。」「自分から話しかけるときにはどんなタイミングがいいだろうか。」 「ラノベ好きな人がいるといいな」等、そんなことばかりを考えていた。 かがみはひさしぶりに上機嫌であった。今日はなぜかタバコの減りがおそい。 一日の授業が終わり、いよいよコンパの時間になった。店は居酒屋のチェーン店だ。 かがみは、普段は見せないかいがいしさを見せた。みんなに親しんでもらいたかったからである。 幹事「それでは、新入生のみなさん。順次自己紹介をお願いします。」 散在していた新入生たちは、順次自己紹介をはじめた。すぐにかがみの番になった。 かがみ「陵桜学園高校出身、柊かがみです。よろしくお願いします。」 今まで自己紹介した人間と変わらない反応だった。 かがみはもっと何か面白いことを言って、みんなに注目してもらうべきだったのか?そんな風に思った。 酒が回り始めたころ段々と新入生達も緊張が解け、会話を始める者が出てきた。 かがみも隣に座っていた同級生の女子に話しかけた。 かがみ「ねえ、何でこのサークル選んだの?将来何か目指しているの?」 部員A「柊さんでしたっけ?私将来はまだ考えていないんです。ただ、勉強しておけば役に立つかなとおもって。」 かがみ「法学部だよね?」 部員A「はい」 かがみ「法曹とか目指さないの?」 部員A「そんなこと考えてないです。まだ、一年ですし。」 かがみ「……………」 こいつはダメだな。他さがそ。 かがみはビールを持ち女子が多そうな場所に行き、気遣いする振りをして話の輪に入ろうとした。 かがみ「みんな、将来法曹なんかめざすの?」 部員B「考えてない。」 部員C「一応法曹を目指しているけど…………。」 みんな歯切れの悪い会話だった。 それでも、かがみの目から見ると、かがみ以外の学生はみんな楽しそうに会話しているようにみえる。 何故だか自分ひとりが浮いているような状態だった。ここでもかがみは会話の輪の中に入り損ねたようだった。 いまさら無理に人の輪に入り込むのは難しいだろう。 かがみは、トイレに行き、タバコを一服飲んだ。 かがみ「また、話の輪に入り損ねちゃった。」 かがみが気遣いしている時に、人間関係が出来上がってしまったようです。 かがみは早々にコンパに見切りをつけ家に帰ることにした。なんだか自分だけ浮いているようだし、 この場では同級生と何を話したらいいのか自分でも解らなかったからである。 こうして自分が浮いてしまってから考えると、いきなり司法試験の話はまずかったと思っている。 何を話したらいいのか解らない状態のまま無理に話しかけ、ドツボにはまったら起死回生は無理である。 早めに引き上げた方がいい。 まだ夜は浅い。制服の女学生が乗るには遅すぎ、酔っ払いが乗るには早すぎる時間だったので、 電車の中ではしゃぐバカを見ずに家に向かえた。 いまの自分が楽しそうに話す女学生と乗り合わせたら、それこそ敵わない。 家に着くとまつりが出迎えた まつり「お帰りかがみ。早かったのね。」 かがみ「途中で抜けてきたからね。」 まつり「なんかあったの?いい男とかいなかったの?」 かがみはドキッとした。いい男どころか、自分は周りから浮いていたなんて言えない。 かがみ「男どころか、女もバカばっかよ!」 まつり「へー。食事は?」 かがみ「済ませてきた。」 かがみは台所へ行き、お気に入りのグラスにでお冷を飲み干し、酔いをさました。 かがみは、部屋で荷物を整理しながら「それでも自分はましかな」と思った。 いのり、まつり、つかさといった姉妹がいるおかげで下宿生よりは寂しさが少ないと思った。 しかし、家族がいるのはありがたいが、家族がすべての問題を解決してくれるわけではない。 やはり、大学に友達を作りたいという気持ちに変わりはない。 「あの、奥手なつかさですら友達を作れたのに・・・・。」かがみはそう思っていた。 つかさは件のコンテストの準備でなにやら急がしそうである。その姿をかがみはうらやましく見ていた。 そんな時、かがみの頭にある考えが浮かんだ。「そうだみゆきに相談してみよう。」 みゆきに相談することにより、何か解決できるかもしれない、 みゆきは面倒見がいいし、何かいい案を出してくれるかもしれない。 かがみは自分が変われば、同窓も変わると思ったのであった。 かがみは勉強で忙しいみゆきに邪魔にならぬ時間を見計らって電話をかけた。 みゆきは意外と簡単に逢う約束してくれた。 医学部は勉強が大変だと聞いていたが、面倒見のいいみゆきはかがみのために時間を作ってくれたのだろう。 場所はみゆきの下宿、時は、次の日曜日に決まった。 みゆきに家から通えないほどみゆきの通っている医大は遠くないが、みゆきは医大の近くのマンションに住んでいた。 みゆきが勉強に集中できる環境を作ってあげたいという配慮や、子供を早く独り立ちさせたほうが良いという親の考え、 また、医大は実験などが大変なので夜遅くなった場合は下手に家に帰るよりも安全といった複合的理由でみゆきはこんな贅沢な暮らしをしているのである。 セレブの娘しかこんな贅沢は出来ないだろう。 みゆき「どうぞお入りください。」 かがみ「では、お邪魔します。」 みゆき部屋を見てかがみは思った。金というものは有る所には有るのだなと。 みゆきが紅茶の用意をしてくれているようである。 みゆき「さあ、どうぞ紅茶を召し上がってください。安い紅茶でお恥ずかしいですが。」 かがみは、遠慮なく紅茶を飲んだ。そして話を切り出した。 かがみ「実は、なんだか私大学に溶け込めてなのよね。人と会話していてもなかなか上手く話が続かなくって・・・。 それで、もし高校時代の私と今の私で変わったところがあったら教えてほしいの。」 かがみは高校時代に上手くいっていた人間関係が、大学に入ると同時に上手くいかなくなった理由を知りたかったのだ かがみ「みゆき、怒らないから正直に言ってほしいの、私どっか変わった?」 みゆきは困ったようにいった。 みゆき「もしかすると、かがみさんは『空気が読めない』とか言われる、と言うことでしょうか?」 かがみ「そんな感じなの。」 みゆき「かがみさん。絶対に怒らないと約束できますか?」 かがみ「もちろん。みゆきがそんなにおかしなことするはずないし。」 みゆき「・・・・・・では、おはなししましょう。」 みゆき「実は、かがみさんを演出していたのは私なのです。」 かがみ「えっ。どういうこと。」 みゆき「私は、かがみさんと初めて出会ったころ、この人時々空気読めてない発言する人だなと思ったのです。 だから、私は、かがみさんの発言が、空気読めてない発言だったときには私なりにフォローを入れていたのです。」 悪気でやったのではないのです。かがみさんがみなさんから孤立し、悲しむのを見たくなかったのです。」 かがみは驚きを隠せなかった。上手くいっていた高校時代の人間関係はみゆきのおかげだったのである。 かがみがこれほどまでにみゆきに見守られていたとは、かがみ自身、知る由もなかった。 かがみ「でもどうしてそんな面倒なことを、私の為に?」 みゆき「お解かりいただけないでしょうか。私はかがみさんに友情を超えた、もっと激しい感情を持っているのです。」 かがみ「・・・・・・・。」 みゆき「これを男女では愛と呼ぶのでしょう。 かがみさんを最初に見たとき、なんて綺麗なオリエンタルアイ、上品な口元、白兎の様に白い柔肌、胸も上品な形で、 本当に綺麗な巫女さんという感じでした。かがみさん私だけの物になってください。」 かがみは、当惑はしたものの、こんなにも自分を必要としてくれている人がいることに気がついた。 かがみには、みゆきがいる。これだけでかがみの心は十分満たされ、寂しさは消え去った。 かがみは、みゆきのくちづけを受け入れていた。
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Ep.1 Ep.2 Ep.3 Ep.4 Ep.5 Ep.6 Ep.7 Ep.8 Ep.F Ep.1 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 縁寿 右代宮縁寿 10万円 100万円 縁寿(本社) 兄弟姉妹 ※オプションで他にも追加 戦人 右代宮戦人 360万円 50万円 戦人(本社) 従兄弟、兄弟姉妹 真理亞 右代宮真理亞 150万円 20万円 真理亞(本社) 従兄弟、マリアージュ・ソルシエール 譲治 右代宮譲治 220万円 30万円 譲治(本社) 従兄弟 朱志香 右代宮朱志香 100万円 180万円 朱志香(本社) 従兄弟 ベアトリーチェ ベアトリーチェ 1700万円 400万円 ベアトリーチェ(本社) マリアージュ・ソルシエール Ep.2 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 南条医院 南條雅行 1000万円 600万円 新島組合 新島組合 サバ 熊沢鯖吉 38万円 38万円 新島組合 うみねこのいぶくろ 川畑漁船 川畑船長 470万円 60万円 新島組合 新島組合 マルフク寝具店 さくらたろう 400万円 40万円 新島組合 新島組合 新島組合 新島村長 1400万円 40万円 新島組合(本社) 新島組合 Ep.3 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 煉獄の七姉妹 ルシファー 1400万円 30万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール シエスタ姉妹近衛隊 シエスタ00 9億9999万円 99万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール ロノウェ ロノウェ 6660万円 30万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール ガァプ ガァプ 6億6099万円 880万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール さくたろう さくたろう 3939万円 39万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール マリア・ベアトリーチェ 1億5000万円 1万円 マリアージュ・ソルシエール(本社) マリアージュ・ソルシエール Ep.4 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 元同級生の働くパン屋 赤子 5000万円 760万円 元同級生の働くパン屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くそば屋 青子 4000万円 350万円 元同級生の働くそば屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くラーメン屋 緑子 4500万円 710万円 元同級生の働くラーメン屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くメイド喫茶 銀子 6000万円 660万円 元同級生の働くメイド喫茶(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くケーキ屋 白子 1億円 410万円 元同級生の働くケーキ屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働く建築会社 金子 300億円 1200万円 元同級生の働く建築会社(本社) Ep.5 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 蔵臼 右代宮蔵臼 4億円 50万円 蔵臼(本社) 兄弟姉妹 夏妃 右代宮夏妃 2億円 30万円 夏妃(本社) 苦労人 絵羽 右代宮絵羽 1億2000万円 90万円 絵羽(本社) 兄弟姉妹 秀吉 右代宮秀吉 3億2000万円 70万円 秀吉(本社) 苦労人 留弗夫 右代宮留弗夫 7000万円 80万円 留弗夫(本社) 兄弟姉妹 霧江 右代宮霧江 1000万円 60万円 霧江(本社) 苦労人 楼座 右代宮楼座 8000万円 40万円 楼座(本社) 兄弟姉妹 Ep.6 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 大月スーパー 大月ポスドク 20億円 300万円 大月大学院大学 大月家 大月ゲームセンター 大月助教 10億円 600万円 大月大学院大学 大月家 大月コンビニ 大月准教授 13億円 1700万円 大月大学院大学 大月家 大月アパート 大月@管直人 10億円 800万円 大月大学院大学 大月家 大月大学院大学 大月教授 100億円 1200万円 大月大学院大学(本社) 大月家 Ep.7 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ ドラノール ドラノール・A・ノックス 1111億1111万円 1111万円 ヱリカ 真実の追究者、天界大法院 コーネリア コーネリア 10億0009万円 1009万円 ヱリカ 真実の追究者、天界大法院 ガートルード ガートルード 10億0007万円 1007万円 ヱリカ 真実の追究者、天界大法院 ヱリカ 古戸ヱリカ 280億円 28万円 ヱリカ(本社) 真実の追究者 Ep.8 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 小此木食品 小此木鉄郎 100億円 1020万円 右代宮財閥 うみねこのいぶくろ、右代宮財閥 マルソー 円宗 100億円 998万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮運輸 竜宮 100億円 1200万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮電機 北条 100億円 1600万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮製薬 古手 100億円 3200万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮絵羽 200億円 1600万円 右代宮財閥(本社) 右代宮財閥 Ep.F 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 源次 呂ノ上源次 400億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 紗音 紗音 700億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 嘉音 嘉音 100億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 郷田 郷田俊朗 90億円 60万円 郷田(本社) うみねこのいぶくろ、家具なんて言わないで 熊沢 熊沢チヨ 300億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 金蔵 右代宮金蔵 777億7777万円 7777万円 八城十八 右代宮財閥 ベルンカステル ベルンカステル 969億6969万円 1万円 ベルンカステル(本社) 真実の追究者 ウィラード ウィラード・H・ライト 10億円 22万円 八城十八 天界大法院 六軒島 東京都港湾局長 400億円 1万円 東京都 新島組合 八城十八 八城十八 1101億9960万円 570万円 八城十八(本社) 東京都 東京都知事 1000億円 1万円 東京都(本社)
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554 :1/2:2010/01/02(土) 09 45 44 ID fdrIIMYw (自炊)ツンデレに明けましておめでとうって言ったら 『さむっ…… 洗い物してたらすっかり体が冷えてしまいました。早くこたつに入らないと』 「あ、姉さん。明けましておめでとう」 『え?』 「いや、もう12時過ぎたからさ」 『あ、そうですね。明けましておめでとう、タカシ。と言っても余りおめでたくありませんけど』 「は? おめでたくないって何で?」 『だって、タカシの顔を見ながら年越しなんて、おめでたいわけないじゃないですか』 「新年早々から毒舌かよ。てか、毎年の事じゃん。何を今更」 『ええ。ですから私は、おめでたいお正月なんて一度も迎えた事はありません』 「はっきりと言い切ったね。この姉は」 『だってどうして、この顔見て、おめでたいお正月だなんて言えると思います? 有り 得ないでしょう?』 「わかったよ。なら、俺は姉さんが不幸にならないように、部屋でゲームでもしてるよ。 大晦日なんだし、今日くらいは夜遅くまで遊んでてもいいだろ?」 『ダメです』 「そんなケチ臭い事言うなよ。いいじゃん。年末年始くらいさ」 『ダメです。ゲームがダメとは言いませんけど、こたつから出ちゃダメです』 「何言ってんだよってつめたっ!! 何だこれ? 姉さんの足か?」 『食器洗いしてたら、冷え切ってしまいましたから。タカシには湯たんぽがわりになって貰います』 「こたつから出るなってそれでか。つか、めっちゃ冷たいんだけど」 『我慢しなさい。誰のおかげで豪華な夕食が食べられたと思っているんですか』 「そりゃ、稼いでくれてる親父のおかげ……って冷たい冷たい冷たい!! 両足で包み込 んでスリスリすんな」 『私が作ってあげてるからでしょう。そういう意地悪い事言っていると、朝のお雑煮は無しですよ』 「わかった、わかったから。全くもう……我慢すればいいんだろ」 『分かればいいんです。んふふっ♪ 暖かくて気持ち良いですね』 「さっきまで、めでたくないとか言ってたクセに、めっちゃ幸せそうな顔してるよこの人」 『仕方ないでしょう。この気持ち良さには勝てないんですから』 「でさ。姉さん」 555 :2/2:2010/01/02(土) 09 47 26 ID fdrIIMYw 『何ですか。文句なら受け付けませんよ』 「いや。何で足がだんだん上に上がって来てんのかなーって思って」 『足先の温度だけだと物足りなくなって来たので。文句は言わせませんからね』 「わかったよ。もう好きにしてくれ」 『(年明け早々からタカシといちゃいちゃ出来るとか、幸せですね……フフッ……)』 『いっそこのまま足を奥に伸ばして行って、タカシのア……アソコを…… ここが一番熱いの……とか。って私ってば新年早々何を変態な妄想してるんだろ……はぅ……(/////////)』 終わり 規制中なのでこっちで